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死後事務委任契約で不動産売却はできない?遺言など4つの対策早見表

死後事務委任契約 不動産 売却

「死後事務委任契約を結んでおけば、亡くなった後に自宅や土地も売却してもらえるのでは」と考える方は少なくありません。結論からお伝えすると、死後事務委任契約だけでは不動産を売却することはできません。不動産の売却は相続財産の「処分」にあたり、葬儀や役所の手続きといった「事務」を任せる死後事務委任契約の範囲を超えているためです。

亡くなった後に不動産を売却してもらいたいなら、遺言書で「清算型遺贈(売却して代金を渡す内容)」を定め、遺言執行者を指定しておくのが基本です。生きているうちであれば、生前売却・任意後見契約・家族信託といった選択肢もあります。この記事では、死後事務委任契約でできること・できないことを整理したうえで、不動産を確実に売却・処分するための4つの対策を早見表でわかりやすく解説します。

目次

結論:死後事務委任契約だけでは不動産は売却できない

まずは結論を早見表で確認しましょう。不動産について「誰に・何を任せられるか」は、制度によってはっきり分かれています。

不動産に関してやりたいこと死後事務委任契約遺言書+遺言執行者
亡くなった後に自宅・土地を売却するできないできる(清算型遺贈)
売却代金を特定の人・団体に渡すできないできる(遺贈・遺贈寄付)
不動産の名義変更(相続登記)できない遺言に基づき手続き可(登記申請は司法書士)
賃貸住宅の解約・明け渡しできる遺言の内容による
自宅の遺品整理・家財の処分できる遺言の内容による
電気・ガス・水道などの解約できる対象外が一般的

表のとおり、死後事務委任契約が得意なのは「亡くなった直後の身の回りの事務」です。一方、不動産そのものを売る・名義を変える・代金を分けるといった財産の行き先を決める行為は、遺言書と遺言執行者の役割になります。そのため、不動産をお持ちの方は「遺言書」と「死後事務委任契約」をセットで準備するのが基本形です。

ニコニコ終活アドバイザーからの一言アドバイス:
「死後事務委任契約に『自宅を売却してほしい』と書いておけば大丈夫」と誤解されている方を多くお見かけします。契約書に書いても、相続人の権利を超えて不動産を売ることはできません。売却まで任せたいなら、必ず遺言書をあわせて作成してください。

死後事務委任契約でできること・できないこと【不動産まわり】

なぜ死後事務委任契約では不動産を売却できないのか、契約で任せられる範囲から確認していきます。

死後事務委任契約でできること

死後事務委任契約は、ご本人が元気なうちに、亡くなった後の各種手続きを信頼できる人や専門家に任せておく契約です。通常の委任契約は本人の死亡で終了しますが、死後の事務を任せる内容であれば、死亡後も契約が続く形で結ぶことが判例上も認められています。主に次のような事務を任せられます。

  • 葬儀・火葬・納骨・永代供養の手配
  • 病院・介護施設の利用料などの精算
  • 役所への届け出(健康保険証の返却、年金の停止など)
  • 賃貸住宅の解約・明け渡し・敷金の精算
  • 遺品整理・家財道具の処分
  • 電気・ガス・水道・携帯電話・インターネットなどの解約
  • パソコンやスマートフォン、SNSアカウントなどデジタル遺品の整理
  • 親族・知人への死亡の連絡

不動産に関係するものとしては、「賃貸住宅の明け渡し」「自宅の遺品整理」「空き家になった自宅のライフライン解約」などが、死後事務委任契約で任せられる代表的な事務です。

死後事務委任契約でできないこと

反対に、次のような行為は死後事務委任契約では任せられません。詳しくは死後事務委任契約でできないこと一覧と解決策でも解説しています。

  • 不動産・預貯金・株式など相続財産の売却や分配
  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 遺産を誰に引き継がせるかの指定
  • 認知や養子縁組などの身分に関する行為
  • 生前の財産管理や介護の契約(判断能力が低下した後の代理)

不動産を売却できない理由は「所有権が相続人に移る」から

人が亡くなると、その瞬間に不動産を含む財産の所有権は相続人に引き継がれます。死後事務委任契約の受任者は、ご本人から事務を頼まれた立場にすぎず、不動産の所有者でも相続人の代理人でもありません。そのため、受任者が相続人の同意なく不動産を売却したり、売却代金を自由に使ったりすることはできないのです。

もし死後事務委任契約の中に「自宅を売却して代金を〇〇に渡す」と書いても、それは財産の行き先を決める内容であり、本来は遺言書で定めるべき事項です。遺言としての方式を満たしていなければ、相続人に対して効力を主張することは難しく、かえって相続人とのトラブルの原因になりかねません。

死後に不動産を売却させる方法は「清算型遺贈+遺言執行者」

亡くなった後に不動産を売却してもらいたい場合、最も確実なのが遺言書による清算型遺贈です。基本的な仕組みと、実際に進めるうえでの注意点を整理します。

死後事務委任契約 不動産売却の方法

清算型遺贈の仕組み

清算型遺贈とは、遺言書の中で「自宅不動産を売却し、売却代金から諸費用を差し引いた残りを〇〇に遺贈する」というように、不動産を現金化したうえで渡す方法です。不動産のまま引き継ぐと管理や固定資産税の負担が残りますが、現金にして渡せば受け取る側の負担が軽く、複数人に分けたり、団体へ寄付したりもしやすくなります。

  • 不動産を現金化して分配・寄付できる
  • 遺言書で遺言執行者を指定しておくことが重要
  • 売却の実務を担える専門家を遺言執行者にすると安心

遺言書の具体的な書き方や文例は換価分割する遺言書の書き方と具体的な文例で詳しく紹介しています。

遺言執行者が売却手続きを進める

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権限を持つ人です。遺言で清算型遺贈が定められていれば、遺言執行者が相続人全員の同意を取り付けることなく、不動産会社への売却依頼や買主との売買契約などを進められます。相続人には、遺言執行者から遺言の内容が通知されます。

なお、清算型遺贈で不動産を売却する際は、いったん相続人の名義に相続登記をしてから買主へ名義を移すのが一般的な流れです。登記申請の手続きは司法書士の業務になるため、遺言執行者と司法書士が連携して進めることになります。

清算型遺贈で注意したい3つのポイント

  • 売却による税金:売却益が出た場合の譲渡所得税は、相続人が申告・負担する扱いになることがあります。遺言を作る段階で税理士に確認しておくと安心です
  • 遺留分:配偶者や子どもなど遺留分のある相続人がいる場合、全額を第三者に渡す内容だと遺留分を請求される可能性があります
  • 遺言の形式:自筆証書遺言は形式不備で無効になるリスクがあるため、公証役場で作成する公正証書遺言が安心です

遺言執行者と死後事務の受任者は同じ人にすると進めやすい

不動産を売却するには、まず家の中を空にする遺品整理が必要です。遺言執行者が売却を、死後事務の受任者が遺品整理やライフラインの解約を担当するため、両者が別々の人だと連絡や段取りに時間がかかります。同じ専門家に遺言執行者と死後事務の受任者を兼ねてもらうと、片付けから売却までを一つの流れで進めやすくなります。

ニコニコ終活アドバイザーからの一言アドバイス:
遺言書と死後事務委任契約は、作成する時期や依頼先がばらばらになりがちです。内容が食い違うとトラブルの原因になるため、できれば同じ専門家に、同じタイミングでまとめて相談することをおすすめします。

不動産をお持ちの方の「売却」と「死後事務」の役割分担 生前(判断能力があるうち) ・自分で売却する(生前売却) ・任意後見契約/家族信託で、判断能力低下に備える ご本人の死亡 遺言書+遺言執行者 ・自宅・土地の売却 ・売却代金の分配・寄付 ・名義変更の手続き (登記申請は司法書士) 財産の「処分」 死後事務委任契約 ・葬儀・納骨の手配 ・遺品整理・家財の処分 ・賃貸の解約・明け渡し ・ライフラインの解約 身の回りの「事務」

生前にできる不動産対策:生前売却・任意後見・家族信託

亡くなった後ではなく、生きているうちに不動産の扱いを決めておく方法もあります。ポイントは「判断能力が低下すると、本人は不動産を売れなくなる」という点です。認知症などで判断能力が低下すると売買契約を結べなくなり、事実上、不動産が動かせない状態になります。代表的な3つの生前対策を比較してみましょう。

対策内容向いている方注意点
生前売却元気なうちに自分で売却し、現金化しておく住み替えや施設入居の予定がある方住まいを失うため、住み替え先の確保が必要
任意後見契約判断能力が低下した後に、任意後見人が財産を管理・処分できるようにする今は自宅に住み続けたいが、将来の売却に備えたい方家庭裁判所が選ぶ任意後見監督人がつき、本人の死亡で終了する
家族信託信頼できる家族に不動産を託し、管理・売却の権限を渡す託せる家族がいて、柔軟に管理・承継したい方信託契約の設計が複雑。信託の登記は司法書士が行う

生前売却:シンプルで確実だが住まいの確保が必要

ご自身で不動産を売却しておけば、相続の時点で不動産は残らず、死後に売却の手続きを誰かに頼む必要もありません。施設への入居や住み替えを考えている方にとっては、最もわかりやすい方法です。売却で得た現金は老後資金に充てたり、遺言書で渡し先を決めたりできます。

任意後見契約:判断能力が低下した後の売却に備える

任意後見契約は、判断能力があるうちに「将来、判断能力が低下したら財産管理をお願いする人」と、その権限を決めておく契約です。契約は公正証書で作成し、判断能力が低下した段階で家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると効力が生じます。代理権の範囲に不動産の売却を含めておけば、任意後見人が自宅を売却して施設の費用に充てる、といった対応が可能になります。

なお、何も準備がないまま判断能力が低下すると、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選んでもらう法定後見の利用を検討することになります。法定後見の場合、本人の住まいである居住用不動産を売却するには家庭裁判所の許可が必要です。また、任意後見も法定後見も本人の死亡で終了するため、死後の売却には使えません。死後事務委任契約との違いは死後事務委任契約と任意後見契約の違いで解説しています。

家族信託:生前から死後まで切れ目なく管理を任せられる

家族信託は、ご本人(委託者)が信頼できる家族(受託者)に不動産を託し、管理や売却の権限を渡す仕組みです。信託契約で定めておけば、ご本人の判断能力が低下した後も受託者が売却でき、ご本人が亡くなった後に誰が財産を受け取るかまで決めておくことができます。託せる家族がいる方には有力な選択肢ですが、契約の設計には専門的な知識が必要です。

「財産管理委任契約」は生前の代理のみで死後は使えない

元気なうちから財産管理を任せる「財産管理委任契約(任意代理契約)」もあります。身体が不自由になったときなどに便利ですが、判断能力が低下した後は本人がチェックできないため、金融機関や不動産取引で受け付けてもらえない場面もあります。また本人が亡くなると代理権は消滅するため、死後の売却には使えません。任意後見契約や遺言書とあわせて準備するのが一般的です。

相続人の有無で変わる不動産の行方とトラブル

遺言書がない場合、不動産がどうなるかは相続人がいるかどうかで大きく変わります。

相続人がいる場合:遺産分割協議と受任者とのトラブルに注意

遺言書がなければ、不動産は相続人全員の共有となり、売却するかどうか、誰が引き継ぐかは相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めることになります。相続人の一人が反対すれば売却は進みません。また、2024年4月から相続登記が義務化されており、不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記をする必要があります。詳しくは相続登記の義務化と期限の解説をご覧ください。

さらに、死後事務委任契約の受任者が相続人の知らないところで遺品整理や費用の支払いを進めると、「勝手に処分された」「預けたお金の使い道がわからない」といったトラブルになることがあります。相続人がいる方は、死後事務委任契約を結んだことや内容を事前に家族へ伝えておくことが大切です。よくある失敗例は死後事務委任契約の落とし穴と失敗しない解決策でまとめています。

相続人がいない場合:相続財産清算人が売却し、残りは国庫へ

相続人がいない、または全員が相続放棄をした場合、利害関係人などの申立てにより家庭裁判所が相続財産清算人を選任します。相続財産清算人は不動産を売却するなどして債務を清算し、特別縁故者への分与がなければ、残った財産は最終的に国庫に帰属します。この手続きには時間と費用がかかり、死後事務の受任者が不動産を売却することはできません。

お世話になった人や団体に財産を残したい方は、遺言書で清算型遺贈を定めておかないと、その希望はかないません。身寄りのない方の財産の流れは身寄りなしの財産はなぜ国庫へ?でも解説しています。

不動産をお持ちの方の準備の流れと依頼先

不動産の売却まで見据えて準備する場合の、一般的な流れは次のとおりです。

  1. 不動産・預貯金など財産の一覧を作り、自宅をどうしたいか(売却・特定の人に渡す・寄付)を決める
  2. 生前売却・任意後見・家族信託など、生前の対策が必要かを検討する
  3. 遺言書(清算型遺贈・遺言執行者の指定)の内容を専門家と決める
  4. 死後事務委任契約で、葬儀・遺品整理・明け渡し・解約などの事務を決める
  5. 公証役場で公正証書遺言・公正証書の死後事務委任契約を作成する
  6. 契約内容と依頼先を、家族や関係者に伝えておく

依頼先ごとの役割

依頼先主に任せられること
行政書士遺言書の原案作成、死後事務委任契約書の作成、死後事務の受任
司法書士相続登記・信託登記など不動産の登記申請
弁護士相続人同士の争い、遺留分の請求など紛争への対応
税理士譲渡所得税・相続税の申告や試算
不動産会社売却価格の査定、買主探し、売買の仲介

遺言書や死後事務委任契約は、公証役場で公正証書にしておくと、内容の証明がしやすく安心です。公証役場の手数料は契約や遺言の内容・財産額によって変わるため、事前に公証役場や依頼する専門家に確認してください。専門家への報酬や、死後事務の費用に充てる預託金も別途必要になるのが一般的です。

死後事務委任契約と不動産売却に関するよくある質問

不動産の売却代金を団体に寄付することはできますか?

できます。遺言書で「自宅を売却し、その代金を〇〇に遺贈する」と定め、遺言執行者を指定しておけば、売却代金を慈善団体や自治体などに寄付する遺贈寄付が可能です。寄付先によっては不動産のままでは受け取れず、現金のみ受け付けている場合もあるため、清算型遺贈がよく使われます。寄付先の受け入れ条件は事前に確認しておきましょう。

賃貸住宅に住んでいる場合も遺言書は必要ですか?

賃貸住宅の解約・明け渡しや家財の処分は、死後事務委任契約で任せられます。ただし、敷金の返還金や預貯金など財産の行き先を指定したい場合は、遺言書が必要です。賃貸住宅は放置すると家賃が発生し続けるため、死後事務委任契約で明け渡しの手配を決めておくと安心です。

家族がいても死後事務委任契約を結ぶ意味はありますか?

あります。ご家族が高齢だったり遠方に住んでいたりすると、亡くなった後の手続きは大きな負担になります。ただし、家族がいる場合は、受任者と家族の間でトラブルにならないよう、契約内容を事前に共有しておくことが大切です。

死後事務委任契約は何歳から結べますか?

法律上の年齢の目安は特になく、成人で判断能力があれば結ぶことができます。不動産の売却を含めて準備する場合、判断能力が低下してからでは遺言書や任意後見契約を作れなくなるため、元気なうちに準備を始めることが大切です。

まとめ:不動産の売却は遺言書、身の回りの事務は死後事務委任契約で

死後事務委任契約は、葬儀や遺品整理、賃貸住宅の明け渡し、ライフラインの解約といった「身の回りの事務」を任せる契約です。不動産の売却や名義変更は相続財産の処分にあたるため、死後事務委任契約だけでは行えません。

  • 死後に売却させたい:遺言書で清算型遺贈を定め、遺言執行者を指定する
  • 生前に売却・管理したい:生前売却、任意後見契約、家族信託を検討する
  • 相続人がいない:遺言書がなければ相続財産清算人の手続きを経て、残りは国庫へ
  • 身の回りの事務:死後事務委任契約で、葬儀・遺品整理・明け渡しなどを任せる

ニコニコ終活アドバイザーからの一言アドバイス:
不動産をお持ちのおひとりさまやお子さまのいないご夫婦は、「遺言書」と「死後事務委任契約」をセットで準備するのが基本です。どちらか一方だけでは、売却と片付けのどちらかが止まってしまいます。

ニコニコ終活では、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)を中心に、終活や死後事務に関するご相談を無料で承っています。提携する行政書士法人杉山事務所では、遺言書や死後事務委任契約の作成をサポートしています。不動産の登記が必要な場合は司法書士、相続人同士の争いがある場合は弁護士と連携してご案内しますので、まずはお気軽に無料相談をご利用ください。

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