全財産を一人に相続させる遺言書の簡単な書き方と無効を防ぐポイント

全財産を特定の誰か一人に相続させたい場合、手書きの遺言書に全ての財産を譲る旨を記載し、日付と署名をしてハンコを押すだけでご自身でも作成することが可能です。
ただし、ご自身で作成する手書きの遺言書は、法律で定められた形式に少しでも不備があると無効になってしまう恐れがあります。また、他のご家族が持つ遺留分という権利に配慮しておかないと、ご自身の死後に親族間で大きな揉め事が発生してしまう原因にもなりかねません。
ニコニコ終活に寄せられるご相談のなかでも、特定の家族にだけ財産を残したいけれど書き方や手続きが難しそうだと不安を感じているお声をお聞きします。ご自身の意思を確実に残し、残されたご家族の負担を減らすためには、正しいルールを知って作成することが大切であり、必要に応じて専門家のサポートを受けることも有効な選択肢です。
本記事では、特定の相手へ財産を引き継がせるための具体的な文例や、失敗を防ぐための重要ポイント、安全に保管する方法をわかりやすく解説します。
全財産を一人に相続させる遺言書の簡単な書き方と具体的な文例
財産を特定の相手だけに渡したい場合、複雑な手続きを想像されるかもしれませんが、基本のルールを守れば自分自身で手書きする自筆証書遺言によって作成が可能です。ここでは、具体的な作成手順とそのまま使える文例をご紹介します。
自筆証書遺言を使って手書きで作成する手順
自分で遺言書を作成する際は、法律で定められたルールに沿って進める必要があります。作成の大まかな流れは以下の通りです。
- 誰に財産を譲るかを明確に決める
- 紙と消えないペンを用意して全文を手書きする
- 作成した正確な日付を記入する
- 署名をして実印を押す
誰に財産を譲るかを明確に決める
まずは、ご自身の持っている財産を誰に引き継がせたいかを決定します。全財産を一人に譲る場合は、不動産や預貯金などを個別に洗い出す必要はなく、全ての財産をその人に渡すという意思を固めるだけで問題ありません。
紙と消えないペンを用意して全文を手書きする
遺言書を書くための用紙に指定はありませんが、長期間保存することになるため、破れにくいしっかりとした紙を選ぶと安心です。また、鉛筆や消せるボールペンは改ざんの恐れがあるため使用せず、黒のボールペンや万年筆を使用してください。
作成した正確な日付を記入する
遺言書には、作成した日付を必ず記入しなければなりません。何年何月何日という形で、誰が見てもいつ書かれたものかが明確にわかるように記載することが法律上の絶対条件となっています。
署名をして実印を押す
最後に、ご自身の氏名をフルネームで署名し、名前の横や下に印鑑を押します。印鑑の種類に法的な制限はありませんが、本人であることを強く証明するために、市区町村に登録している実印を使用することをおすすめします。
妻や長男など特定の一人に相続させる場合の文例
全ての財産を一人に譲る場合、個別の財産を細かく書き出す必要はありません。以下のテンプレートを参考に、ご自身の状況に合わせてすべて手書きで作成してみてください。
遺言者〇〇〇〇(ご自身の氏名)は、次のとおり遺言する。
一、遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の妻〇〇〇〇(〇年〇月〇日生)に相続させる。
令和〇年〇月〇日(作成した年月日)
遺言者住所 東京都〇〇区〇〇1-2-3
遺言者氏名 〇〇〇〇 印(実印を押印)
遺言書で一人に相続させる際に失敗しないための重要ポイント
手書きの遺言書は手軽に作成できる一方で、書き方に少しでも不備があると法的に無効となるリスクがあります。確実に思いを残すために、注意すべき4つのポイントを解説します。
失敗を防ぐための4つのポイントの全体像
遺言書を法的に有効なものとして機能させるためには、以下の4つの要素を満たすことが非常に重要です。
- 財産は一切の財産という表現を用いてまとめる
- 氏名と生年月日で相続人を正確に特定する
- パソコンは不可であり本文と日付と氏名を必ず手書きする
- 法的効力を高めるために認印ではなく実印を使用する
財産は一切の財産という表現を用いてまとめる
預貯金や不動産を一つひとつ細かく書き出す必要はありません。一切の財産を相続させると書くことで、いま所有している財産だけでなく、将来増えるかもしれない財産も含めて、すべての財産をその一人に引き継がせることができます。個別に書くと、書き漏れがあった際に手続きが複雑になる恐れがあります。
氏名と生年月日で相続人を正確に特定する
妻や長男といった関係性だけを書くのではなく、相手の氏名と生年月日を正確に記入します。これにより、同姓同名の別人と間違えられることを防ぎ、誰に財産を渡したいのかを法的に疑いの余地なく特定することができます。
パソコンは不可であり本文と日付と氏名を必ず手書きする
自筆証書遺言は、財産目録以外のすべての文章をご自身の手で書かなければなりません。パソコンでの作成や代筆、音声や動画での記録は法的に認められていません。また、書き間違えた場合の訂正方法にも厳格なルールがあるため、間違えた場合は最初から新しい紙に書き直すのが最も確実です。
法的効力を高めるために認印ではなく実印を使用する
法律上は認印やシャチハタのようなスタンプ印でも無効とはなりませんが、本人が作成したことの証明力を最大限に高めるためには実印を押すのが最も安心です。実印と印鑑証明書がセットになることで、偽造の疑いをかけられるリスクを減らすことができます。
手書きの遺言書によるトラブルを防ぐ安全な作成方法と保管場所
自分で書いた遺言書は、紛失したりご家族に見つけてもらえなかったりする恐れがあります。また、偽造を疑われてご家族間のトラブルに発展するケースもあるため、安全な保管方法や確実な作成方法を検討することが大切です。
紛失や改ざんを防ぐ法務局の自筆証書遺言書保管制度
自分で書いた遺言書を法務局という公的な機関で預かってもらえる制度があります。この制度を利用することで、遺言書の紛失や一部の相続人による書き換えのリスクをなくすことができます。また、ご自身が亡くなった後に、ご家族が遺言書を見つけやすくなるという大きな利点もあります。
作成の不備による無効を防ぐ公正証書遺言の活用
より確実に遺言を残したい場合は、公証役場で公証人と呼ばれる法律の専門家に作成してもらう公正証書遺言という方法があります。一定の費用はかかりますが、法的な不備で無効になる心配がなく、文字を書くのが難しくなった方でも作成できるという安心感があります。
手書き遺言書と公正証書遺言の特徴や費用の比較
ご自身で書く自筆証書遺言と、公証人に作成してもらう公正証書遺言には、それぞれ異なる特徴があります。以下の表で違いを確認し、ご自身の状況やご希望に合った方法を選びましょう。
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
| 作成方法 | 本人が全文を手書きする | 公証人が本人の意思を聞き取って作成する |
| 費用 | 基本的に無料(法務局保管の場合は数千円) | 財産の額に応じて数万円から十数万円程度 |
| 無効になるリスク | 書き間違いなどの形式不備で無効になる恐れがある | 公証人が作成するため無効になるリスクはほぼない |
| 紛失・偽造のリスク | 自己保管の場合はリスクあり(法務局保管なら防げる) | 公証役場で原本が保管されるためリスクはない |
| 死後の手続き | 家庭裁判所での検認手続きが必要(法務局保管は不要) | 家庭裁判所での検認手続きは不要ですぐに相続手続き可能 |
一人に全財産を相続させる場合に注意すべき遺留分という権利
全財産を特定の誰か一人に渡す遺言書を書く場合、他のご家族が本来受け取れるはずの財産を巡って大きなトラブルになることがあります。ここでは、遺言書を書く前に必ず知っておくべき法律上の権利について解説します。
遺留分とは一定の相続人に保証された最低限の取り分
配偶者や子ども、両親など、残された一定のご家族には、遺言の内容に関わらず最低限の財産を受け取る権利が法律で保障されています。これを遺留分と呼びます。なお、亡くなった方の兄弟姉妹にはこの遺留分という権利は認められていません。
遺留分侵害額請求による家族間の揉め事を防ぐ対策
もし遺留分を無視してすべてを一人に相続させる遺言書を残した場合、財産を受け取れなかったご家族が、財産をもらった人に対して不足分のお金を支払うよう請求する可能性があります。これが原因で残されたご家族の仲が修復不可能になることも少なくありません。トラブルを防ぐためには、あらかじめ遺留分に配慮した財産配分にするか、遺言書の最後にどうしてこのような配分にしたのかという思いを記す付言事項を活用するなどの対策が有効です。
遺言書で一人に相続させる書き方に関するよくある質問
特定の人物にすべての財産を残すための遺言書作成において、多くの方が疑問に感じる点についてお答えします。
家族以外の第三者にも全財産を譲ることはできますか
ご自身の財産を誰に譲るかは自由に決めることができるため、お世話になった友人や内縁のパートナーなど、ご家族以外の第三者に全財産を譲ることも可能です。ただし、この場合も法定相続人の遺留分には十分に配慮する必要がありますし、相続税が通常よりも高く計算されることがあるため、事前によく確認することが大切です。
遺言書を書き直したい場合はどうすればよいですか
遺言書は、ご本人が生きている間であれば何度でも書き直すことができます。新しく遺言書を作成した場合、日付が新しいものが優先して法的な効力を持ちます。トラブルを防ぐためには、古い遺言書は破棄し、最新のものだけを手元に残すか、法務局や公証役場での手続きをやり直すのが確実な方法です。
まとめ
遺言書で特定の一人のみに財産を相続させる場合は、一切の財産を譲る旨を手書きし、正確な日付や署名、実印の押印を行うことで手軽に作成できます。
ニコニコ終活としては、手書きの不備による無効や、遺留分を巡るご家族間のトラブルを未然に防ぐため、ご自身の状況に合わせて公正証書遺言の作成や法務局での保管制度の利用も合わせてご検討されることをおすすめいたします。
遺言書の正しい書き方や、特定の方への相続に関するご不安がありましたら、ぜひ一度ニコニコ終活までご相談ください。ニコニコ終活は全国対応で、何度でも完全に無料でご相談いただけます。お客様の思いを確実な形で残し、ご家族が笑顔で過ごせるよう丁寧にお手伝いいたします。