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成年後見制度を利用しない理由と4つのデメリット|代替策4つを比較

成年後見制度を利用しない理由

成年後見制度を利用しない人が多い理由は、主に「一度始めると原則として途中でやめられない」「専門職の後見人が選ばれると報酬が長く続く」「財産の自由な活用や相続対策が難しくなる」「家族が後見人に選ばれるとは限らない」という4つのデメリットにあります。ご本人を守るための制度である一方、ご家族の希望どおりに財産を動かせる仕組みではない点が、利用をためらう大きな原因です。

ニコニコ終活の相談窓口にも、「親の口座が凍結されそうで成年後見を調べたが、費用と制約に驚いた」「ほかに負担の少ない方法はないのか」というお声が多く寄せられます。一方で、すでに認知症が進んでいる場合は、成年後見制度が事実上ほぼ唯一の選択肢になることもあります。

この記事では、成年後見制度を利用しない理由とデメリットを、メリットとの比較表で整理したうえで、法定後見と任意後見の違い、そして成年後見制度を利用しない方法として選ばれる任意後見・家族信託・財産管理委任契約・遺言の4つの対策を比較します。最後に、ご家族の状況に合わせた選び方を図解でご紹介します。

目次

結論:成年後見制度を利用しない理由は「やめられない・費用が続く・自由に使えない」

成年後見制度 利用しない

成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が不十分になった方の財産と権利を守るための公的な制度です。制度の目的はあくまで「ご本人の保護」であり、ご家族の利便性を優先する仕組みではありません。このギャップが、利用しない理由として挙げられるデメリットにつながっています。

成年後見制度を利用しない人が挙げる主なデメリットは、次の4つです。

  1. 原則として途中でやめられない(ご本人の判断能力が回復するか、亡くなるまで続く)
  2. 専門職後見人が選ばれると、毎月の報酬が長期間続く
  3. 投資・生前贈与・自宅売却など、財産の自由な活用や相続対策が難しい
  4. 家族が後見人を希望しても、家庭裁判所の判断で選ばれないことがある

ただし、成年後見制度には「判断能力が低下した後からでも使える」「不当な契約を取り消せる」といった、ほかの対策にはない強みもあります。大切なのは、利用するかどうかを感覚で決めるのではなく、メリットとデメリット、そして代わりの対策を比べたうえで判断することです。ご本人が元気なうちであれば、任意後見契約や家族信託などで、成年後見制度を使わずに済む備えをしておくことができます。

成年後見制度を利用しない理由となる4つのデメリット

ここでは、法定後見(家庭裁判所が後見人を選ぶ成年後見制度)を中心に、利用をためらう理由となる4つのデメリットを具体的に解説します。なお、制度の運用は家庭裁判所ごと・事案ごとに異なる部分があるため、実際の取り扱いは管轄の家庭裁判所や専門家に確認してください。

デメリット1:原則として途中でやめられない

成年後見制度で最も誤解されやすいのが、「目的を果たしたら終わりにできる」という思い込みです。実際には、銀行口座の凍結解除や実家の売却、遺産分割協議への参加といった一時的な目的で申し立てた場合でも、その手続きが済んだからといって制度を終了させることは原則としてできません。

後見は、ご本人の判断能力が回復して取消しが認められるか、ご本人が亡くなるまで続くのが基本です。その間、後見人による財産管理と家庭裁判所への定期的な報告は続きます。途中で報酬の支払いが負担になったり、後見人との相性が合わなかったりしても、ご家族の都合だけでやめることはできない点を理解しておく必要があります。後見人の交代も、不正や任務に適しない事情などがある場合に家庭裁判所が判断するもので、自由に選び直せるわけではありません。

デメリット2:専門職後見人への報酬が続く

弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が後見人に選ばれた場合、ご本人の財産から報酬が支払われます。報酬額は後見人が自由に決めるのではなく、家庭裁判所が管理する財産の額や業務の内容をもとに決定します。一般的な目安は月額2万円から6万円程度で、管理する財産が多い場合や、不動産の売却など特別な業務があった場合は加算されることがあります。

この報酬はご本人が亡くなるまで続くため、期間が長くなるほど総額は大きくなります。月額報酬と期間ごとの累計額を、単純計算で示すと次のとおりです。

月額報酬の目安5年間の累計10年間の累計15年間の累計
月2万円約120万円約240万円約360万円
月3万円約180万円約360万円約540万円
月5万円約300万円約600万円約900万円

認知症と診断されてから10年以上暮らす方も珍しくないため、数百万円単位のコストになることは十分に考えられます。年金収入が少ない方の場合、報酬の支払いが介護費用や施設費用を圧迫することもあります。報酬の支払いが難しい場合には、市区町村によって助成制度が設けられていることがあります。詳しくは成年後見制度の費用が払えない場合の解決策と助成金の活用方法もあわせてご覧ください。

デメリット3:財産の自由な活用や相続対策が難しい

成年後見制度の基本は「ご本人の財産を減らさずに守る」ことです。そのため、ご家族から見て合理的な財産活用であっても、ご本人の直接の利益にならない行為は原則として認められません。具体的には、次のような行為が難しくなります。

  • 株式や投資信託など、元本割れのリスクがある資産運用
  • 相続税対策としての生前贈与や、お孫さんへの教育資金の援助
  • 相続対策を目的とした賃貸アパートの建築や土地の買い換え
  • ご家族の生活費や立て替え分を、ご本人の口座から自由に引き出すこと

また、ご本人が住んでいる、または住んでいた自宅(居住用不動産)を売却・賃貸・取り壊しする場合は、後見人の判断だけではできず、家庭裁判所の許可が必要です。施設の入居費用に充てるなど、売却の必要性と相当性が認められなければ許可は下りません。空き家になった実家を「売りたいタイミングで売る」ことは難しくなると考えておきましょう。

相続の場面でも制約があります。たとえば父親が亡くなり、母親が認知症で遺産分割協議に参加できない場合、母親に後見人をつけて協議を進めることになります。しかし後見人は母親の利益を守る立場のため、原則として母親の法定相続分を確保する必要があり、「二次相続の税金を抑えるために子どもへ多めに分ける」といった分け方には同意できないのが一般的です。

デメリット4:家族が後見人に選ばれないことがある

申立ての際に「長男を後見人に」と候補者を書くことはできますが、最終的に誰を選ぶかは家庭裁判所が決めます。次のようなケースでは、ご家族ではなく専門職が選ばれる、またはご家族が後見人になっても専門職の後見監督人がつけられる可能性が高くなります。

  • まとまった預貯金や不動産など、管理する財産が多い
  • ほかの親族が候補者に反対している、親族間で対立がある
  • 賃貸物件の管理や遺産分割など、財産管理が複雑
  • 候補者とご本人の間で、お金の貸し借りなど利益が対立する事情がある

「家族が後見人になれば費用はかからない」と考えて申し立てたものの、結果として第三者の専門職が選ばれ、報酬の支払いや財産管理のやり取りが続くことに戸惑うご家族は少なくありません。誰が選ばれるかは事案ごとの家庭裁判所の判断になるため、申立て前に専門家へ見通しを確認しておくと安心です。

そのほかの理由:申立ての手間とご本人の心理的負担

家庭裁判所への申立てには、医師の診断書、戸籍謄本、財産目録、収支予定表などの書類をそろえる必要があり、平日に働くご家族にとっては大きな負担です。また、制度を使うにはご本人の判断能力の低下を公的な手続きで認めることになるため、ご本人が強く拒否されるケースもあります。無理に進めれば親子関係にひびが入る恐れもあり、慎重な話し合いが欠かせません。

なお、インターネット上の「成年後見制度はひどい」という体験談や不満の声については、成年後見制度がひどいと知恵袋で言われる5つの理由と後悔しない対策で詳しくまとめています。この記事では、利用しない場合に何を選べばよいか、代わりの対策の比較に重点を置いて解説します。

ニコニコ終活アドバイザーからの一言アドバイス:
「口座凍結を解除したいだけ」「実家を売りたいだけ」という目的で申し立て、後から一生続く制度だと知って驚かれる方が多くいらっしゃいます。申し立てる前に、目的を果たした後も続くことを前提に費用と手間を見積もっておきましょう。

成年後見制度のメリットとデメリットの比較表

デメリットばかりが注目されがちですが、成年後見制度にはほかの対策では代わりがきかないメリットもあります。利用しないと決める前に、どのような場面で役に立つ制度なのかを確認しておきましょう。主なメリットは次の5つです。

  • 判断能力が低下した後からでも利用を始められる
  • 凍結された銀行口座の手続きや財産管理を代わりに行える
  • 詐欺や悪質商法による不当な契約を取り消せる
  • 介護施設の入所契約や入院手続きを代理で進められる
  • 家庭裁判所の監督により、親族による使い込みを防ぎやすい

判断能力が低下した後でも使える唯一の仕組み

任意後見契約や家族信託、財産管理委任契約は、いずれも契約です。契約を結ぶには、ご本人が内容を理解して合意できる判断能力が必要です。すでに認知症が重度に進み意思疎通が難しい場合、これらの契約は結べません。その状態でも家庭裁判所への申立てによって利用を始められるのが、法定後見の最大の強みです。

口座凍結への対応と、取消権による詐欺被害の防止

金融機関は、口座名義人の判断能力が失われたことを把握すると、不正な引き出しを防ぐために取引を制限することがあります。後見人が選ばれれば、法的な代理人として金融機関で手続きができ、ご本人の預貯金から施設利用料や医療費を支払えるようになります。ご家族が長期間立て替え続ける負担を避けられます。

また、法定後見人には、ご本人がした不当な契約を後から取り消せる「取消権」があります(日用品の購入など日常生活に関する行為は除かれます)。訪問販売で高額な布団やリフォーム工事を契約してしまった場合でも、後見人が取り消して支払ったお金を取り戻す手続きを進められます。家族信託や任意後見にはこの取消権がないため、詐欺や悪質商法から直接守るという点では成年後見制度が優れています。

施設入所・入院の手続きと、親族間トラブルの防止

後見人には、財産管理だけでなく、介護サービスの利用契約、老人ホームの入所契約、入院契約などをご本人に代わって行う「身上保護(身上監護)」の役割があります。施設側から、判断能力が低下した方の入所契約に後見人の選任を求められることもあります。ご家族が遠方に住んでいても、後見人が窓口となって手続きを進められます。

さらに、後見人は定期的に家庭裁判所へ財産と収支を報告するため、同居の親族が親の預貯金を勝手に使ってしまうといった使い込みを防ぎやすくなります。兄弟姉妹の仲が悪く、誰か一人に財産を任せると疑念が生まれやすいご家庭では、むしろ第三者が入ることが安心材料になる場合もあります。

メリットとデメリットを並べると、次のように「守る力が強い分、動かす自由が小さい」という関係にあることが分かります。

観点メリットデメリット
始める時期判断能力が低下した後でも申し立てられる一度始めると原則として途中でやめられない
財産管理口座の手続きや支払いを代理で行える投資・生前贈与・相続対策は原則できない
不動産必要があれば裁判所の許可を得て売却できる自宅の売却には家庭裁判所の許可が必要
本人の保護取消権で不当な契約を取り消せる本人の希望より「財産を守ること」が優先される
生活の手続き施設入所・入院などの契約を代理できる申立て書類の準備や裁判所への報告に手間がかかる
費用親族後見人で監督人もつかなければ報酬負担は小さい専門職が選ばれると月2万〜6万円程度が目安で継続
後見人裁判所の監督で使い込みを防ぎやすい家族を希望しても選ばれないことがある

法定後見と任意後見の違い

「成年後見制度」は、大きく法定後見と任意後見の2種類に分かれます。ここまで解説したデメリットの多くは、家庭裁判所が後見人を選ぶ法定後見の特徴です。一方の任意後見は、ご本人が元気なうちに「将来誰に何を任せるか」を自分で決めておく制度で、成年後見制度を利用しない代わりの対策としても選ばれています。

比較項目法定後見任意後見
準備・利用開始のタイミング判断能力がすでに低下している時元気なうちに契約し、判断能力が低下した後に開始
手続きの起点親族などが家庭裁判所に申し立てる公証役場で公正証書による任意後見契約を結ぶ
後見人の決め方家庭裁判所が選任するご本人があらかじめ指定する
支援の内容法律で定められた権限に基づく契約で決めた範囲に基づく
取消権ありなし
監督家庭裁判所(必要に応じて後見監督人)家庭裁判所が選ぶ任意後見監督人
継続的な費用の目安専門職後見人なら月2万〜6万円程度任意後見監督人に月1万〜2万円程度

法定後見は、ご本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの類型に分かれ、類型によって支援者に与えられる権限の範囲が異なります。制度の全体像や申立ての流れは、家族の財産を守る成年後見制度をわかりやすく説明!費用と手続きの流れで解説しています。

任意後見は、後見人を自分で選べ、支援の内容も契約で決められる点が大きなメリットです。ただし、実際に任意後見が始まるのは、判断能力が低下した後に家庭裁判所が任意後見監督人を選任してからです。監督人には専門職が選ばれることが多く、月1万円から2万円程度の報酬が目安として発生する点や、法定後見のような取消権がない点は理解しておきましょう。

また、成年後見制度については「途中でやめられない」「本人の意思が尊重されにくい」といった課題を受けて、見直しの議論が進められています。改正の内容や施行時期によっては使い勝手が変わる可能性があるため、最新の状況は成年後見制度は廃止される?2026年法改正の重要ポイントと今後の対策を参考にしつつ、法務省や家庭裁判所の公表情報、専門家にご確認ください。

成年後見制度を利用しない方法|代わりの4つの対策を比較

法定後見のデメリットを避けたいなら、ご本人の判断能力がしっかりしているうちに、別の対策を準備しておくことが重要です。代表的なのが、任意後見契約・家族信託・財産管理委任契約・遺言の4つです。それぞれカバーできる範囲が異なるため、まずは一覧で比較してみましょう。

比較項目任意後見契約家族信託財産管理委任契約遺言
効力が及ぶ時期判断能力の低下後契約直後から亡くなった後まで契約直後から(判断能力があるうち)亡くなった後
主にできること財産管理と身上保護託した財産の管理・運用・処分、承継先の指定預貯金の管理や支払いなどの代行財産の分け方の指定
施設入所・入院の契約できるできない契約の範囲で可能できない
不動産売却・資産活用制限がある契約の範囲で柔軟に可能契約の範囲で可能(判断能力低下後は難しい)対象外
裁判所の関与任意後見監督人を通じてありなしなし自筆証書は検認が必要な場合あり
費用の目安公正証書の作成費用+開始後は監督人報酬初期費用が数十万円〜100万円超になることも契約書作成費用など比較的少額自筆なら少額、公正証書は財産額に応じた手数料
向いている人生活面も含めて信頼できる人に任せたい実家の売却や相続対策を柔軟に行いたい今すぐ財産管理を手伝ってほしい死後の財産の分け方を決めておきたい

任意後見契約:信頼できる人を自分で選べる

任意後見契約は、将来判断能力が低下したときに備えて、財産管理や生活面の手続きを任せる人と内容を、元気なうちに決めておく契約です。公証役場で公正証書として作成します。ご家族や信頼できる知人を後見人に指定できるため、「家族が後見人に選ばれないかもしれない」という法定後見の不安を避けられます。

一方で、開始後は任意後見監督人への報酬が続くこと、取消権がないこと、相続税対策のような積極的な財産活用には向かないことがデメリットです。生活面の手続きを任せられる点は家族信託にない強みのため、家族信託と組み合わせて準備する方も多くいます。死後の手続きまで含めて備えたい方は、死後事務委任契約と任意後見契約の違いとは?老後と死後の安心を備える方法も参考になります。

家族信託:財産を柔軟に動かせるが生活面は対象外

家族信託は、親(委託者)が元気なうちに、信頼できる子どもなど(受託者)と契約を結び、預貯金や不動産の管理・処分の権限を託す仕組みです。親が認知症になった後も、受託者が信託口座から介護費用を支払ったり、空き家になった実家を適切なタイミングで売却したりできます。家庭裁判所への定期報告はなく、家族が受託者であれば継続的な専門家報酬も原則かかりません。

さらに、遺言では「自分の次」の承継先しか決められないのに対し、家族信託では「自分の後は配偶者へ、配偶者の後は長男の家系へ」というように、二代先以降の承継先まで指定できます。前妻との間にお子さんがいる方や、お子さんのいないご夫婦で先祖代々の土地を特定の親族に引き継ぎたい方に向いています。

デメリットは次の3点です。

  • 判断能力がすでに失われていると契約できない
  • 介護契約や入院手続きなどの身上保護はできない
  • 契約書の設計や信託登記などで、初期費用が数十万円から100万円を超えることもある

また、受託者となる家族に強い権限が集中するため、兄弟姉妹の間に不信感がある場合は、かえってトラブルの原因になることもあります。税務や登記が関わる仕組みのため、契約内容は必ず専門家と相談して設計しましょう。

財産管理委任契約:元気なうちから管理を任せられる

財産管理委任契約は、判断能力はあるものの、足腰が弱って銀行に行けない、入院中で支払いができないといった場合に、預貯金の管理や公共料金の支払いなどを信頼できる人に任せる契約です。契約した時点から効力が生じ、家庭裁判所の関与もないため、すぐに使えるのが特徴です。

ただし、公的な監督がないため、任された人の管理状況をチェックする仕組みを契約で用意しておくことが大切です。また、金融機関によっては代理人による手続きに独自の条件がある場合や、ご本人の判断能力が低下した後は契約に基づく手続きが難しくなる場合があります。そのため、任意後見契約とセットで結び、判断能力が低下したら任意後見へ切り替える「移行型」として準備する方法がよく選ばれます。

遺言:亡くなった後の財産の分け方を決める

遺言は、亡くなった後に財産を誰にどう分けるかを指定するものです。認知症対策そのものではありませんが、成年後見制度では難しい相続対策の一部を、元気なうちに意思として残せる手段です。たとえば遺言があれば、相続人の中に認知症の方がいても、遺産分割協議を経ずに財産を引き継げる場合があります。

一方で、生前の財産管理や施設入所の手続きには一切使えません。任意後見や家族信託と組み合わせて「生前」と「死後」の両方をカバーするのが基本です。書き方や作成方法に不安がある方は、遺言書の書き方を教えてくれるところは?専門家の選び方もご覧ください。

ニコニコ終活アドバイザーからの一言アドバイス:
「家族信託か任意後見か、どちらか一つ」と決めつけて悩まれる方が多いのですが、財産は家族信託、生活の手続きは任意後見、死後の分け方は遺言、というように組み合わせることで、それぞれの弱点を補えます。

成年後見制度を使うか、代わりの対策にするかの選び方

どの対策が合うかは、「ご本人に今、契約できる判断能力があるか」「財産をどこまで動かしたいか」「いつから任せたいか」の3つで大まかに判断できます。次の図は、一般的な考え方の目安をまとめたものです。

成年後見制度と代わりの対策の選び方 Q1 本人に判断能力がある? (契約の内容を自分で理解できる) いいえ はい 法定後見を家庭裁判所へ申立て (契約型の対策は選べないことが多い) Q2 実家の売却や相続対策など 財産を柔軟に動かしたい? はい いいえ 家族信託で財産を託す (介護・入院の契約は任意後見で補う) Q3 今すぐ財産管理を任せたい? (入院中・体が不自由で銀行に行けない など) はい いいえ 財産管理委任契約+任意後見 (移行型でまとめて準備) 任意後見契約で将来に備える (公証役場で公正証書を作成) どのルートでも:死後の分け方は遺言で ※あくまで目安。最終判断は専門家に確認

法定後見(成年後見制度)が適しているケース

  • 認知症が進み、ご本人が契約の内容を理解できない
  • 親族間に対立があり、特定の家族に財産を任せるとトラブルになりそう
  • 悪質商法の被害が心配で、取消権による保護が必要
  • 遺産分割協議に認知症の親が参加できず、相続手続きが止まっている

ご本人の判断能力がすでに失われている場合、任意後見や家族信託は契約できないため、法定後見を検討することになります。また、兄弟姉妹の間で不信感が強い場合は、家庭裁判所の監督のもとで中立の専門職が管理する方が、お金の流れが明確になりトラブルを防ぎやすいこともあります。

代わりの対策(任意後見・家族信託など)が適しているケース

  • ご本人が心身ともに元気で、将来の希望を自分の言葉で話せる
  • 近くに信頼できる子どもや配偶者、甥・姪などがいる
  • 実家の売却、アパートの建て替え、生前贈与などを将来も続けたい
  • 専門職への継続的な報酬をできるだけ抑えたい

「施設に入ることになったら自宅を売って費用に充ててほしい」といった希望をご本人が明確に話せる段階こそ、代わりの対策を準備する最適なタイミングです。財産を動かしたいなら家族信託、生活面の手続きも含めて任せたいなら任意後見、今すぐ手伝ってほしいなら財産管理委任契約というように、目的から逆算して選び、必要に応じて組み合わせましょう。

ニコニコ終活アドバイザーからの一言アドバイス:
認知症は、ある日突然、あるいは少しずつ、ご家族の選択肢を減らしていきます。「まだ大丈夫」と思える今のうちに家族会議を開き、親御さんの希望を聞いておくことが、成年後見制度を使わずに済む一番の近道です。

成年後見制度を利用しない理由に関するよくある質問

ニコニコ終活の無料相談でよくいただく質問と回答をまとめました。個別の取り扱いは家庭裁判所や専門家に確認してください。

成年後見制度を途中でやめる方法はありますか?

現行の制度では、原則としてご家族の都合で途中でやめることはできません。終了するのは、ご本人の判断能力が回復して家庭裁判所が後見開始の審判を取り消した場合や、ご本人が亡くなった場合などに限られます。見直しの議論も進められていますが、利用中の方への影響を含めて最新の情報を家庭裁判所や専門家に確認しましょう。

後見人への報酬が払えない場合はどうなりますか?

報酬は家庭裁判所がご本人の財産状況を踏まえて決めるため、財産が少ない場合は報酬額が抑えられることがあります。また、市区町村によっては、成年後見制度の利用にかかる申立て費用や報酬を助成する制度を設けている場合があります。対象や金額は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターに確認してください。

家族が後見人になれば費用はかかりませんか?

ご家族が後見人に選ばれ、報酬を請求しなければ、専門職への継続的な支払いは原則として発生しません。ただし、財産額や親族の状況によっては家庭裁判所の判断で専門職の後見監督人がつけられることがあり、その場合は監督人への報酬が続きます。申立て費用や診断書の費用、鑑定が必要な場合の費用もかかるため、費用ゼロとは言い切れません。

認知症と診断された後でも家族信託や任意後見はできますか?

認知症と診断されたからといって、ただちに契約ができなくなるわけではありません。軽度で、契約の内容を理解して判断できる状態であれば、契約できる可能性があります。ただし、判断能力が十分でないと後から契約の有効性が争われるおそれもあるため、物忘れが気になり始めた段階で早めに専門家へ相談し、医師の意見も踏まえて慎重に進めることが大切です。

成年後見と家族信託は併用できますか?

併用できます。たとえば、不動産や主な預貯金は家族信託で柔軟に管理し、介護サービスの契約や入院手続きは任意後見でカバーするという組み合わせが代表的です。家族信託の弱点である身上保護を補い、成年後見の弱点である財産活用の不自由さを和らげることができます。どの財産をどの仕組みに入れるかは、専門家と相談して設計しましょう。

まとめ:成年後見制度を利用しないなら、元気なうちの準備がカギ

成年後見制度を利用しない理由は、原則として途中でやめられないこと、専門職後見人への報酬が続くこと、財産の自由な活用や相続対策が難しいこと、家族が後見人に選ばれないことがあることの4点に集約されます。一方で、判断能力が低下した後でも使え、取消権や身上保護でご本人を守れるという、ほかの対策にはない強みもあります。

法定後見のデメリットを避けたいなら、ご本人が元気なうちに、任意後見契約・家族信託・財産管理委任契約・遺言を目的に合わせて組み合わせておくことが大切です。どの対策も、判断能力が低下してからでは選べなくなる可能性があるため、早めの検討をおすすめします。制度の細かな取り扱いは変わることもあるため、最終的には家庭裁判所や専門家に確認してください。

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