成年後見制度のメリットとデメリットとは?利用前に知るべき注意点

成年後見制度は認知症などで判断能力が低下した方の財産を守る有効な仕組みですが、利用に伴う費用や制限を正しく把握してから検討すべき制度です。
親の口座が凍結されて生活費や介護費用が引き出せないという切実なお悩みがニコニコ終活の相談窓口にも多く寄せられますが、焦って申し立てを行い後悔するご家族も少なからずいらっしゃいます。
制度を一度開始すると原則として途中でやめることができず、専門家への月々の報酬負担が発生し続ける点や、相続税対策などの積極的な資産運用ができなくなる点には十分な注意が必要です。
この記事では成年後見制度の具体的な利点と欠点を比較しながら、ご自身の状況に制度が合っているかどうかを判断するための基準や対策について詳しく解説します。
成年後見制度とは?
成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分ではない方を、法的に保護し支援するための制度です。本人の代わりに財産を管理したり、必要な契約を行ったりすることで、ご本人が安心して生活できるようにサポートします。
制度の根本的な目的はご本人の権利と財産を守ることであるため、ご家族の利便性を優先する制度ではないという点をあらかじめ理解しておくことが重要です。

判断能力が不十分な方を守る法定後見と任意後見の違い
成年後見制度には、大きく分けて法定後見制度と任意後見制度の2種類が存在します。現在の判断能力の状態によって、どちらの制度を利用するかが決まります。
以下の表で、法定後見と任意後見の主な違いを比較します。
| 比較項目 | 法定後見制度 | 任意後見制度 |
| 利用を開始するタイミング | すでに判断能力が低下している時 | 判断能力が十分にある元気な時 |
| 後見人の選び方 | 家庭裁判所が適任者を選任する | 本人が希望する人をあらかじめ指定する |
| 支援の内容 | 法律で定められた権限に基づく | 本人と事前に契約で決めた内容に基づく |
| 手続きの起点 | 親族などが家庭裁判所に申し立てる | 公証役場で任意後見契約を結んでおく |
すでに認知症が進行し、ご自身での財産管理が難しい場合は法定後見制度を利用することになります。一方で、将来の不安に備えて元気なうちに対策をしておきたい場合は、任意後見制度を選択することで、希望するご家族に財産管理を任せやすくなります。
家族の負担を減らす成年後見制度を利用する4つのメリット
成年後見制度を利用することで、ご本人だけでなく、介護や支援を担うご家族にとっても多くの恩恵があります。日常生活で直面しやすい法的な壁を乗り越えるための強力な手段となります。

成年後見制度の主なメリットは以下の4点です。
- 凍結された銀行口座の解除と財産管理の代行
- 悪徳商法や詐欺被害からの保護と契約の取り消し
- 介護施設の入所契約や医療手続きのスムーズな進行
- 親族間での財産の使い込みやトラブルの防止
ここからは、それぞれのメリットがご本人とご家族の生活にどのような良い影響をもたらすのかを具体的に深掘りして解説します。
凍結された銀行口座の解除や財産管理の代行が可能になる
銀行などの金融機関は、口座名義人が認知症になり判断能力を失ったことを知ると、不正な引き出しを防ぐために口座を凍結します。口座が凍結されると、ご家族であっても生活費や介護費用を引き出すことができなくなります。
成年後見人が選任されると、法的な代理権を持つため、銀行に対して口座の凍結解除の手続きを行うことができます。これにより、ご本人の預貯金から施設の利用料や医療費を適正に支払うことが可能になり、ご家族が経済的な立て替え負担を背負うリスクを減らすことができます。
認知症につけこむ詐欺被害や悪質商法から本人を保護できる
高齢者を狙った詐欺や、不要な高額商品を買わせる悪徳商法は社会問題となっています。判断能力が低下した状態では、言葉巧みな勧誘に乗ってしまい、不当な契約を結んでしまう危険性が高まります。
成年後見制度の大きなメリットの一つが、本人が行ってしまった不当な契約を後から取り消すことができる取消権です。もしご本人が悪質な訪問販売で高額な布団やリフォーム契約をしてしまった場合でも、後見人が契約を取り消し、支払ったお金を取り戻す手続きを進めることができます。
介護施設の入所契約や病院の入院手続きをスムーズに進められる
ご本人の介護状態が悪化し、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの介護施設に入所する際、本人に判断能力がないと契約手続きを進めることが困難になります。施設側も、法的に有効な契約を結ぶために成年後見人の選任を求めるケースが増えています。
成年後見人は、ご本人の希望や身体の状態、財産の状況を総合的に考慮して、最適な施設選びから契約、さらには病院の入退院の手続きまでを本人に代わって行うことができます。ご家族が遠方に住んでいる場合でも、後見人が窓口となることでスムーズな対応が可能になります。
第三者の関与により親族間の財産使い込みトラブルを防止できる
親の預貯金を同居している一部の親族が勝手に生活費や遊興費に使ってしまうなど、財産の使い込みは親族間トラブルの大きな原因となります。認知症になると本人が気づかないうちに財産が目減りしてしまう恐れがあります。
成年後見制度を利用すると、後見人が全ての財産を厳格に管理し、定期的に家庭裁判所へ収支の報告を行う義務が生じます。弁護士や司法書士などの専門職が後見人になった場合はもちろん、親族が後見人になった場合でも裁判所の監督が入るため、不正な使い込みを未然に防ぎ、透明性の高い財産管理が実現します。
成年後見制度の3つのデメリットと注意点
成年後見制度は非常に強力な保護機能を持つ一方で、ご家族にとって想定外の負担や制限が生じる側面も持ち合わせています。申し立てを行った後に「こんなはずではなかった」と後悔しないよう、マイナス面も正確に把握しておく必要があります。

検討時に必ず知っておくべきデメリットは以下の3点です。
- 専門家が選ばれた場合の継続的な報酬負担
- 一度開始すると原則として途中でやめられない制約
- 積極的な資産運用や生前贈与ができなくなる点
これらのデメリットが、ご家族の将来設計にどのような影響を与えるのかを詳しく解説していきます。
弁護士や司法書士など専門家への報酬が継続的に発生する
家庭裁判所の判断により、親族ではなく弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職が成年後見人に選任されるケースが多くなっています。特に財産額が多い場合や、親族間で意見の対立がある場合は専門家が選ばれる傾向にあります。
専門家が後見人に就任した場合、月額2万円から6万円程度の報酬がご本人の財産から支払われ続けます。例えば月額3万円の報酬が10年間続いた場合、総額で360万円もの費用がかかる計算になります。このランニングコストはご本人の財産を圧迫する要因になり得るため、事前の資金計画が欠かせません。
本人の判断能力が回復するか亡くなるまで原則として途中でやめられない
ご家族の中には、銀行の口座凍結を解除するためや、不動産を売却するためなど、一時的な目的で成年後見制度の利用を申し立てる方がいらっしゃいます。しかし、制度の目的が達成されたからといって、途中で後見制度を終了させることは原則としてできません。
ご本人の判断能力が奇跡的に回復するか、あるいはご本人がお亡くなりになるまで、後見人による財産管理と家庭裁判所への報告義務はずっと続きます。途中で専門家への報酬支払いが苦しくなったとしても、自己都合でやめることは許されないため、長期的な視点での覚悟が必要です。
積極的な資産運用や生前贈与など家族のための財産活用が制限される
成年後見制度の最大の目的は、ご本人の現在の財産を減らさずに保護することです。そのため、元本割れのリスクがある株式投資や投資信託への資金移動、新たなアパート建築などの積極的な資産運用は原則として認められません。
また、ご家族のための相続税対策としての生前贈与や、お孫さんのための教育資金の援助なども、本人の財産を減らす行為とみなされるため行うことができなくなります。ご本人の財産はあくまでご本人のためだけに使われるべきという原則があるため、ご家族が良かれと思って計画していた財産活用がストップしてしまう点には注意が必要です。
成年後見制度のメリットとデメリットに関するよくある質問
成年後見制度の利用を検討されるご家族から、日々多くのご質問をいただきます。ここでは、特に誤解されやすいポイントや、よくある疑問についてわかりやすくお答えします。
家族が成年後見人になることは可能ですか?
ご家族が成年後見人になることを希望して申し立てることは可能ですが、最終的に誰を後見人に選ぶかは家庭裁判所が決定します。
ご本人の財産額が一定以上(目安として預貯金が1,000万円以上など)ある場合や、他の親族から反対意見が出ている場合、財産管理が複雑な場合は、希望通りにご家族が選ばれず、専門職(弁護士や司法書士など)が選任される確率が高くなります。申し立ての際には、必ずしも希望が通るわけではないことを念頭に置いておく必要があります。
自宅の売却は後見人の一存で自由にできるのでしょうか?
ご本人が住んでいる、あるいは過去に住んでいた自宅(居住用不動産)を売却したり、賃貸に出したり、取り壊したりする場合、後見人の判断だけで勝手に行うことはできません。
ご本人の生活基盤に関わる重要な財産処分であるため、事前に家庭裁判所へ申し立てを行い、許可を得る必要があります。施設入所費用を工面するためなど、売却する正当な理由と必要性が認められなければ許可は下りないため、不動産取引においては慎重な手続きが求められます。
遺産分割協議に親が参加できない場合も制度を利用できますか?
はい、利用可能です。例えば、父親が亡くなり相続が発生した際、母親が認知症で遺産分割協議に参加できない場合、そのままでは相続手続きを進めることができません。
このようなケースでは、母親のために成年後見人を選任し、後見人が代理として遺産分割協議に参加します。ただし、後見人は母親の法定相続分を確実に確保することが求められるため、税金対策として他の子どもに全財産を集中させるような、母親にとって不利な分割協議に同意することは原則としてできません。
まとめ
成年後見制度は、判断能力が低下した方の財産凍結を防ぎ、悪質商法から守るという強力なメリットがある一方で、専門家への報酬や資産運用の制限といった重いデメリットも伴う重要な法的手続きです。
終活の現場を見てきたニコニコ終活のアドバイザーとしては、すでに認知症が進行している場合は制度の利用が不可避になることも多いため、ご家族の負担を減らすためにも、メリットとデメリットを天秤にかけ、専門家の意見を踏まえて慎重に決断されることを強くお勧めいたします。
ニコニコ終活は全国対応で、成年後見制度や財産管理に関するご不安を何度でも完全に無料でご相談いただけます。現在の状況に制度の利用が本当に適切なのか、まずは無料相談窓口からお気軽にお問い合わせください。