相続土地国庫帰属制度とは?不要な土地を手放す条件と費用を解説

相続土地国庫帰属制度とは
監修
行政書士法人杉山事務所
所属行政書士会:大阪会 / 登録番号:22260069
運営者
ニコニコ終活責任者 飯塚
ニコニコ終活(担当:飯塚)
相談対応毎月10,000件以上

相続や遺贈で引き継いだものの、利用する予定がない土地を国に引き取ってもらう仕組みが相続土地国庫帰属制度です。管理が難しい土地を手放すことで、将来にわたる維持費や固定資産税の負担から解放される画期的な選択肢となります。

制度を利用するには更地であることや境界が明確であることなど、国が定める厳格な条件をクリアする必要があります。審査の手数料に加え、承認後には10年分の管理費にあたる負担金の納付も求められるため、事前の資金計画や書類準備が欠かせません。

私たちのもとにも、親から田舎の土地を引き継いだものの扱いに困っているというご相談が寄せられます。制度が利用できるのか、それとも別の売却方法を探るべきか、迷われる方は少なくありません。状況によっては個別の法的判断を要するため、専門家と連携して慎重に進めることが大切です。

目次

相続土地国庫帰属制度の概要と創設された背景

親から相続した土地の扱いに悩むご家族にとって、国に土地を返還できるというニュースは大きな希望になったかもしれません。ここでは、制度の基本的な仕組みと、なぜこのような仕組みが作られたのかという社会的な背景について詳しく解説していきます。

相続土地国庫帰属制度の基本的な仕組み

相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈によって取得したものの、使い道がない不要な土地を、一定の要件を満たした上で国に引き取ってもらえる仕組みのことです。2023年4月にスタートし、長年手放せなかった土地の新たな手放し方として注目を集めています。

親が残してくれた土地であっても、遠方にあって使い道がない場合、固定資産税を支払い続けたり、近隣からのクレームを防ぐために定期的に草刈りに行ったりと、精神的にも金銭的にも大きな負担となります。子供や孫の世代に負の遺産を残したくないという思いから、この制度を活用して負担を断ち切る方が増えつつあります。

所有者不明土地問題を解消するための目的

この仕組みが作られた背景には、日本全国で深刻化している所有者不明土地の問題があります。親から地方の土地を引き継いだものの、買い手も見つからず管理もできないまま放置されるケースが社会問題となっています。

放置された土地は雑草や害虫による周辺環境の悪化を招くだけでなく、災害時の復旧作業や公共工事を妨げる大きな原因にもなります。こうした事態を防ぎ、将来の世代へ問題が先送りされるのを断ち切るため、国が責任を持って管理できる受け皿を整える目的で創設されました。

相続土地国庫帰属制度を利用できる人と対象となる土地

制度を利用したいと考えたとき、真っ先に確認すべきなのが申請者の資格と土地の条件です。どんな土地でも無条件で引き取ってもらえるわけではなく、国民の税金を使って国が管理していくための厳格な基準が設けられています。

申請できる人は相続または遺贈で取得した個人のみ

制度を利用できるのは、相続や相続人に対する遺贈によって土地を引き継いだ個人に限定されています。売買によって自ら購入した土地や、法人が所有している事業用などの土地は対象外となります。

また、生前に親から贈与された土地も原則として対象外となるため、その土地をどのような経緯で取得したのかを事前にしっかり確認しておくことが大切です。もし複数人で共有している土地であっても、全員の合意があれば申請は可能です。

国が引き取れない却下要件と不承認要件

国が管理していく上での過剰なコストや、近隣住民とのトラブルを防ぐため、引き取れない土地の要件が明確に定められています。申請段階で門前払いとなる却下要件と、その後の調査で弾かれる不承認要件があり、主な全体像は以下の通りです。

  • 建物や工作物が存在している土地
  • 担保権や賃借権などの権利関係が残っている土地
  • 他人の通路や墓地として利用されている土地
  • 有害物質による土壌汚染が確認された土地
  • 隣地との境界が未確定で争いがある土地
  • 崖崩れの危険など管理に過度な費用がかかる土地
  • 地上に放置車両があったり地下に埋設物があったりする土地

これらの厳しい条件について、さらに詳しく見ていきましょう。

建物の有無や権利関係などに関する却下要件

国に引き取ってもらうためには、完全に更地であることが絶対条件となります。古い空き家や農業用の倉庫、ブロック塀やフェンスなどの工作物が残っている場合は、申請前に自己負担で解体や撤去を済ませなければなりません。

また、銀行の抵当権が設定されたままになっていたり、他人に駐車場や農地として貸し出していたりする土地も、権利関係を完全に清算するまでは国庫への帰属が認められません。

土壌汚染や境界不明などに関する不承認要件

法務局による現地調査によって土壌汚染が見つかった場合や、隣の土地との境界線が曖昧で将来トラブルの火種になりそうな土地も不承認の対象となります。

また、急な崖があって崩落の危険がある土地や、地下に古い浄化槽や廃材などのゴミが埋まっている土地など、国が維持管理をする上で多額の費用や手間がかかると判断された場合も引き取りを拒否されてしまいます。

相続土地国庫帰属制度の利用にかかる費用の目安と内訳

不要な土地を手放すとはいえ、手続きを無料で済ませることはできません。手続きにかかる費用について正しく理解しておかなければ、後になって予想外の出費に慌てることになってしまいます。ここでは、必要となる主な費用について整理します。

審査手数料と負担金の金額比較表

制度を利用するにあたって、国に納める費用は大きく分けて審査手数料と負担金の2種類があります。それぞれの金額の目安や特徴は以下の表の通りです。

費用の種類金額の目安費用の特徴
審査手数料土地1筆につき1万4,000円申請時に納付。審査落ちや取り下げでも返金不可
負担金原則として1筆につき20万円10年分の土地管理費。市街地の宅地や農地などは面積に応じて加算

表に示した費用について、さらに具体的な内容を深掘りして解説していきます。

審査手数料は申請時に必要となる

土地1筆ごとに1万4,000円の審査手数料がかかります。この手数料は、法務局での図面確認や実地調査といった審査プロセスにかかる実費としての性質を持ちます。そのため、万が一審査を通過できなかった場合や、途中で考え直して申請を取り下げた場合でも返金されることはありません。複数筆の土地を申請する場合は、その筆数分の手数料が必要になります。

負担金は10年分の土地管理費として納付する

審査を無事に通過して承認された後は、国がその土地を管理していくための費用として負担金を納付します。金額は原則として1筆あたり20万円ですが、土地の性質や立地によって大きく変わります。例えば、市街地にある宅地や一部の農地、森林などは、面積が広くなるほど草刈りなどの管理コストがかかるため、負担金の額も面積に応じて高額に計算される仕組みになっています。

測量や解体などの付随費用にも注意が必要

国に納める手数料や負担金以外にも、厳しい条件をクリアするための準備費用が発生するケースが多くあります。隣地との境界が不明な場合は測量士に依頼して境界を確定させる費用、建物が残っている場合は解体業者への支払いが別途必要です。

さらに、複雑な書類作成や手続きの代行を司法書士などの専門家に依頼した場合の報酬も考慮しなければなりません。これらを含めるとトータルで数百万円にのぼることもあるため、将来の維持費を手放すメリットと目先の費用のバランスをしっかり検討する必要があります。

相続土地国庫帰属制度の申請から完了までの具体的な流れ

費用の準備ができ、制度の利用を決断した後は、どのような手続きを進めていけばよいのでしょうか。窓口となるのは、その土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局の本局です。申請から国庫帰属までの全体のステップを解説します。

申請手続きの全体的なステップ

手続きをスムーズに進め、不足書類などで何度も窓口へ足を運ぶ手間を省くためには、手順を事前に把握しておくことが重要です。申請から完了までの基本的な流れは、以下のようになります。

    1. 管轄の法務局にて事前相談を行う
    1. 必要書類を準備して申請と審査手数料の納付を行う
    1. 法務局の担当者による実地審査が行われる
    1. 法務大臣からの承認通知と負担金額の提示を受ける
    1. 期間内に負担金を納付して手続きを完了させる

それぞれのステップについて、どのように進めればよいのか詳しく確認していきましょう。

法務局での事前相談からスタートする

まずは管轄の法務局に事前相談を申し込みます。相談は原則として予約制となっており、おおむね30分程度の時間が設けられています。この場で、所有している土地の現況や境界の有無、過去の利用状況などを説明し、制度の対象になりそうかどうかの大まかな見通しを確認します。遠方の土地であっても、最寄りの法務局でテレビ会議などを通じて相談できる場合があるため、まずは問い合わせてみましょう。

申請と審査手数料の納付を行う

事前相談を経て申請のめどが立ったら、必要書類をそろえます。登記事項証明書などのほかに、土地の形状を示す図面や現地の全体像がわかる写真など、状況を客観的に証明する資料の作成が求められます。書類一式を窓口へ提出するタイミングで、審査手数料を収入印紙などで納付します。

実地審査を経て承認通知を受け取る

申請が受理されると、法務局の担当職員が実際に現地へ足を運び、実地審査を行います。提出された書類通りの状況か、隣の土地との境界に争いはないか、不法投棄などがないかを入念に確認します。この審査には数か月から半年以上、場合によっては1年近くかかることもあります。無事に審査を通過すると、法務大臣から承認通知書と負担金の金額が記載された通知が届きます。

負担金を納付して国庫への帰属が完了する

承認通知が手元に届いたら、記載された期日である30日以内に指定された負担金を納付する必要があります。期日を1日でも過ぎてしまうとせっかくの承認が失効してしまうため、速やかな対応が求められます。負担金の納付が国によって確認されると、国が所有権移転の登記手続きを行い、晴れて土地が国庫に帰属してすべての手続きは完了となります。

相続土地国庫帰属制度に関するよくある質問

この仕組みに関しては、土地の種類や名義の状況によって、ご家族からさまざまな疑問が寄せられます。ここでは、多くの方が気になっている代表的な質問にお答えします。

農地や山林でも申請することは可能ですか

地目が農地や山林であっても、制度への申請自体は可能です。しかし、手入れがされていない山林は境界が不明瞭になりやすく、放置された農地は草木が生い茂って現況の確認が難しいため、実際には審査を通過するハードルが非常に高くなります。国に引き取ってもらうためには、事前に境界の確認や立ち木の伐採、整地などの多大な労力と費用が必要になることが多いのが実情です。

共有名義の土地でも相続土地国庫帰属制度を利用できますか

亡くなった方の土地を複数の相続人で共有名義にしている場合でも、制度の利用は可能です。ただし、共有者全員が制度の利用に同意し、全員で共同して申請を行う必要があります。一部の共有者だけが自分の持ち分だけを国に引き取ってもらうことはできません。もし共有者間で意見が合わない場合は、まずしっかりと話し合いによる合意形成を行う必要があります。

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