実家じまいで本籍地はどうする?変更不要な理由とメリット

実家じまい(売却や解体)を進める際、実家を本籍地にしている方は多いのではないでしょうか。実家が他人のものになったり、家自体が解体されて更地になったりすると、本籍地をそのままにしておいてよいのか、それとも急いで変更しなければならないのか、大きな不安を抱えがちです。結論から言うと、実家じまいを行っても、本籍地は変更しなくても法律上まったく問題ありません。この記事では、実家を処分した後に本籍地を変更しなくても良い具体的な理由や、そのまま放置するメリット・デメリット、変更(転籍)する場合の具体的な手順について、終活の専門家が分かりやすく解説します。
実家じまいをしても本籍地をそのまま放置して良いのか
実家を処分しても本籍地を変更しなくて良い理由
本籍地は日本国内の地番が存在する場所ならどこでも設定できる
本籍地とは、個人の戸籍が置かれている場所を指します。これは私たちが日常生活を送る「住所(住民登録している場所)」とは全く異なる概念です。日本の法律では、本籍地は日本国内で地番が存在する土地であれば、自分の所有地でなくても、また建物が建っていなくても、どこに設定しても自由であると定められています。極端な例を挙げれば、皇居や富士山の山頂、テーマパークの所在地などを本籍地に設定している人も実際に存在します。そのため、実家じまいによって実家の建物が解体され、更地になったとしても、あるいは他の人に売却されて所有者が変わったとしても、その土地の地番自体が日本国内から消滅するわけではないため、本籍地として登録し続けることに何の法律上の問題もありません。
実家の土地が他人の所有になっても戸籍上の問題は発生しない
実家を第三者に売却して他人の所有地になったとしても、戸籍上に何らかのペナルティが発生したり、売却手続き自体が滞ったりすることはありません。本籍地は単なる戸籍を管轄する役所を示す記号のようなものであり、その土地の所有権や使用権を主張するものではないからです。また、実家を購入した新しい所有者に対して、誰かがここを本籍地にしているという情報が通知されることもありません。そのため、新しい所有者からクレームが来たり、立ち退きを求められたりする心配も一切無用です。実家じまいの売却や解体契約を進める上で、あらかじめ本籍地を変更していなければならないというルールは存在しないため、安心して手続きを進めてください。
本籍地を変更しない場合のメリットとデメリット
- 戸籍の変更手続きの手間や費用がかからない
- 本籍地の場所を忘れる心配がない
- 戸籍謄本が必要になった際の手続きが煩雑になる可能性がある
戸籍の変更手続きの手間や費用がかからない
本籍地を変更しない(転籍届を出さない)ことの最大のメリットは、手続きに関わる手間や費用が一切発生しない点です。本籍地を変更するためには、戸籍謄本を取り寄せ、新しい本籍地や現在の住所地を管轄する役所に転籍届を提出する必要があります。仕事や家事で忙しい日々の中で、役所の開庁時間に足を運んで手続きを行うのは負担となります。実家じまいの最中は、遺品整理や建物の解体、売却契約など、他にもやるべきことが山積みです。本籍地をあえてそのままにしておくことで、実家じまいの慌ただしい時期に余計な手続きを増やすことなく、本来の片付けや売却作業に集中できるという実質的なメリットがあります。
本籍地の場所を忘れる心配がない
長年、慣れ親しんだ実家の住所を本籍地にしている場合、その場所を忘れてしまう心配がありません。本籍地は、日常生活で頻繁に使用するものではないため、いざ必要な場面(パスポートの申請、遺言書の作成、生命保険の請求、結婚・離婚など)になって自分の本籍地はどこにあるのかと迷うことがよくあります。実家の住所であれば、たとえ建物がなくなっても頭にしっかりと記憶されていることが多いため、必要な時にすぐ書類に記入することができます。むやみに本籍地を現在の賃貸住まいなどに変更してしまうと、その後に引っ越しを繰り返す中で本籍地がどこにあるのか分からなくなり、後から確認のために住民票を取得する羽目になるといった二度手間を防ぐことができます。
戸籍謄本が必要になった際の手続きが煩雑になる可能性がある
本籍地を実家のままにしておくことの最大のデメリットは、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)や戸籍抄本が必要になった際、取得手続きに時間と手間がかかる可能性がある点です。戸籍に関する書類は、本籍地がある市区町村の役所でしか発行できません。実家が現在の住まいから遠方にある場合、わざわざ遠くの役所まで出向くか、郵送で取り寄せる必要があります。郵送請求の場合、定額小為替の購入や返信用封筒の準備などが必要になり、書類が手元に届くまでに数日から1週間程度かかります。近年ではコンビニエンスストアで戸籍謄本を取得できる自治体も増えていますが、本籍地の自治体がコンビニ交付に対応していない場合や、事前の利用登録が完了していない場合は利用できず、不便さを感じる場面が増えるでしょう。
ニコニコ終活アドバイザーからの一言アドバイス:実家を処分したからといって、慌てて本籍地を変える必要はありません。実家じまい自体が心身ともに大きなエネルギーを消費するため、本籍地の手続きは後回しにして、まずは目の前の片付けや売却手続きを優先して進めるのが賢明な判断です。
実家じまいに伴い本籍地を変更する場合の手続きと流れ
本籍地を現在の住まいや別の場所に変更する際の手続き
- 転籍届の提出に必要な書類を準備する
- 届出人の署名捺印と必要事項の記入を行う
- 新しい本籍地または現在の住所地の役所へ提出する
転籍届の提出に必要な書類を準備する
本籍地を変更する(転籍する)ことを決めた場合、最初に行うのは必要書類の準備です。本籍地を変更するための届出は転籍届と呼ばれます。この転籍届の用紙は、全国の市区町村役場の戸籍担当窓口で無料で入手できるほか、多くの自治体のホームページからダウンロードして印刷することも可能です。また、現在の本籍地とは異なる市区町村へ転籍する場合は、あらかじめ戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を1通用意しておく必要があります。ただし、2024年3月以降、戸籍法の一部改正により、転籍届の提出時における戸籍謄本の添付が原則として不要になりました。それでも念のため、事前に提出先の自治体ホームページなどで最新の必要書類を確認しておくと手続きがスムーズです。
届出人の署名捺印と必要事項の記入を行う
転籍届の用紙を入手したら、必要事項を記入していきます。届出人になれるのは、戸籍の筆頭者(多くは夫または妻、独身の場合は本人)とその配偶者です。転籍届には、現在の本籍地と筆頭者の氏名、新しく設定したい本籍地の住所(地番または住居表示)、そして届出人それぞれの署名を行います。なお、2021年の法改正により、各種届出書への押印義務が廃止されたため、印鑑の用意は任意(署名のみで可)となっている自治体がほとんどです。ただし、記入ミスがあった場合の訂正印として、念のため認め印を持参しておくと安心です。記入内容に不備があると役所で受理されず、再度足を運ぶことになるため、新しい本籍地の正確な表記を事前に確認した上で、丁寧に記入しましょう。
新しい本籍地または現在の住所地の役所へ提出する
書類の記入が完了したら、管轄する市区町村の役所へ提出します。提出先は、現在の本籍地、新しい本籍地、現在の住所地(届出人の所在地)のいずれの役所でも可能です。そのため、遠方の実家(現在の本籍地)までわざわざ行く必要はなく、現在住んでいる場所の最寄りの役所の戸籍窓口に提出することができます。役所の窓口が閉まっている夜間や土日祝日であっても、夜間受付・休日窓口(宿直窓口)で届出書を預かってもらうことが可能です。ただし、夜間等に提出した場合はその場で書類の審査が行われないため、後日内容に不備が見つかった場合は再度平日に役所から連絡が入り、訂正のために出向く必要がある点には注意してください。
本籍地を変更する場合のメリットとデメリット
- 戸籍謄本などの必要書類を近くの役所で速やかに取得できる
- 家族全員分の本籍地管理が一元化されて分かりやすくなる
- 転籍手続きの手間がかかり過去の戸籍を遡るのが難しくなる
戸籍謄本などの必要書類を近くの役所で速やかに取得できる
本籍地を現在の住まいの近くに変更する最大のメリットは、将来的に戸籍謄本が必要になった際の利便性が劇的に向上する点です。本籍地が生活圏内にあれば、急に戸籍謄本が必要になった場合でも、仕事帰りや買い物のついでに最寄りの役所窓口へ立ち寄り、その場ですぐに発行してもらうことができます。郵送請求のように何日も待つ必要がなく、定額小為替の購入手数料や往復の切手代といった余計な費用もかかりません。近年、マイナンバーカードを利用したコンビニでの戸籍謄本交付サービスを導入する自治体が増えていますが、本籍地を現在の住まいに合わせておけば、コンビニ交付の登録手続きや利用もよりスムーズに行えるようになり、事務手続きのストレスが大幅に軽減されます。
家族全員分の本籍地管理が一元化されて分かりやすくなる
本籍地を現在の家族が居住している場所や、分かりやすい場所に変更しておくことで、家族全員の本籍地管理が一元化され、将来の相続手続きなどで迷うことがなくなります。特に親世代が亡くなり、子ども世代が相続手続きを行う際、親の本籍地がどこにあるのか分からないと、まず本籍地を特定するための住民票の除票などを取得することから始めなければならず、手続きが非常に難航します。実家じまいというタイミングで、本籍地を現在の自宅など家族全員が認識しやすい場所に統一しておくことは、将来子どもや孫が相続の手続き(銀行口座の凍結解除、不動産の名義変更、遺産分割協議など)を行う際の負担を大きく減らすための、極めて有効な生前整理(終活)の一環となります。
転籍手続きの手間がかかり過去の戸籍を遡るのが難しくなる
一方で、本籍地を変更することには戸籍の連続性が途切れるというデメリットが存在します。本籍地を変更すると、新しい役所で新戸籍が作られます。その際、変更前の戸籍に記載されていた内容の一部(例えば、すでに死亡している家族の情報や、離婚した前配偶者の情報、結婚して戸籍から抜けた子どもの情報など)は、新しい戸籍には引き継がれない仕様になっています。そのため、将来的に相続が発生した際、被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までのすべての戸籍を遡って集める必要が生じたとき、本籍地を何度も変更していると、それぞれの自治体に対して個別に除籍謄本や改正原戸籍などを請求しなければならなくなり、相続手続きの難易度が上がってしまいます。
ニコニコ終活アドバイザーからの一言アドバイス:本籍地の変更(転籍)は、目先の便利さだけでなく、将来子どもたちが相続手続きをするときにどう影響するかまで視野に入れて判断することが重要です。迷ったときは、一度ご家族で今後の相続手続きの進め方について話し合ってみることをおすすめします。
本籍地を置く場所の選択肢とそれぞれの特徴を比較
実家以外の場所を本籍地にする場合の主な選択肢
| 選択肢 | 戸籍取得の利便性 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 現在の自宅(持ち家・賃貸) | 非常に高い | 役所が近く書類が必要な時にすぐ手に入る。忘れる心配がない。 | 引っ越し(特に賃貸)のたびに変更すると、過去の戸籍を遡るのが難しくなる。 |
| 皇居や思い出の土地など | 低い | 自分の好きな場所、象徴的な場所を本籍にできる満足感がある。 | 現地に行くのが難しく、郵送請求の手間や費用が毎回かかる。 |
| 実家の住所(据え置き) | 低い〜普通 | 変更手続きの労力がゼロ。先祖代々の土地としての愛着を残せる。 | 遠方の場合は郵送請求になる。コンビニ交付非対応の自治体だと不便。 |
各選択肢における戸籍取得の利便性と管理の手間
- 現在の自宅住所を本籍地にする場合の特徴
- 思い出の場所や皇居などの観光地を本籍地にする場合の特徴
- 実家の住所のまま据え置く場合の特徴
現在の自宅住所を本籍地にする場合の特徴
現在の自宅(特に持ち家など、今後長く住み続ける予定のある場所)を本籍地にするのは、最も実用的で推奨される選択肢です。戸籍の取得が必要になった際、徒歩や自転車、あるいは最寄りの交通機関を利用して、地域の役所窓口へすぐに足を運ぶことができます。ただし、賃貸マンションやアパートに住んでいる場合で、将来的に何度も引っ越しをする可能性がある人は注意が必要です。引っ越しのたびに本籍地を新住所に変更(転籍)してしまうと、前述の通り戸籍が細切れになり、将来の相続人が被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める際に、日本全国の役所へ何通も戸籍を請求しなければならず、多大な負担をかけることになります。そのため、賃貸住まいの場合は、あえて転籍せず実家のままにするか、実家の近くの自治体に留めておくというのも一つの手です。
思い出の場所や皇居などの観光地を本籍地にする場合の特徴
戸籍法上、本籍地は地番が存在する場所であればどこでも良いため、皇居や、富士山山頂、テーマパーク、自分が生まれた記念の場所などを本籍地にする人がいます [1]。これは本籍地の設定としては完全に合法であり、一種のロマンやこだわりとして選択されることがあります [1]。しかし、実務面(戸籍取得の利便性)から見ると、デメリットが非常に大きいです。例えば、本籍地を皇居にした場合、千代田区役所まで書類を取りに行くか、千代田区役所に対して郵送で戸籍謄本を請求しなければならなくなります [1]。実用の観点からは、特にこだわりがない限り、手続きの利便性を優先して生活圏内や分かりやすい場所に本籍地を置いておくのが、終活の観点からも最も賢明な選択と言えます。
実家の住所のまま据え置く場合の特徴
実家じまいをして建物がなくなっても、あえて実家の住所(地番)のまま本籍地を動かさないという選択は、実は非常に多くの人が行っている最も一般的な対応です。この場合、転籍に伴う役所への届出の手間が一切発生しません。また、先祖代々受け継がれてきた土地に対する精神的な愛着や繋がりを、戸籍という形で残しておきたいという遺族の感情にも寄り添うことができます。実家が遠方にある場合の戸籍請求の手間というデメリットはありますが、最近では戸籍の広域交付制度がスタートし、本籍地以外の最寄りの市区町村窓口でも戸籍謄本が取得できるようになるなど、制度の利便性が向上しています。そのため、実家じまいをしてもあえてそのまま据え置くという選択は、現代において非常に合理的な方法の一つとなっています。
ニコニコ終活アドバイザーからの一言アドバイス:本籍地をどこにするかは、実用性と思い入れのバランスで決まります [1]。特に実家を売却した後は気持ちの整理も必要ですから、無理に本籍地を動かさず、制度が便利になった現代の仕組みを上手に活用するのもおすすめですよ。
実家じまいと本籍地に関してよくある質問
実家を売却した後に新しい所有者から苦情が来ることはありませんか
実家を売却して新しい所有者がその土地に住み始めたり、ハウスメーカーが新しい家を建てたりしたとしても、前の所有者(あなた)がその土地を本籍地にし続けていることで、新しい所有者に迷惑がかかったり、そこから苦情が来たりすることは一切ありません。役所がこの土地を本籍地にしている人が他にいるという情報を新しい土地所有者に公開したり、通知したりする仕組みは存在しないからです。本籍地は、不動産の登記情報や住民票のように、その土地の占有や居住を証明するものではなく、あくまでも戸籍を管理する行政上の区分に過ぎません。したがって、売却後のトラブルを心配して、急いで本籍地を変更する必要は全くありませんので、どうぞご安心ください。
本籍地を変更するとマイナンバーカードの登録情報も変わりますか
本籍地を変更(転籍)した場合、マイナンバーカードに記載されている住民票上の住所や氏名などに変更がなければ、マイナンバーカード自体の記載事項変更手続きを行う必要はありません。マイナンバーカードに本籍地は直接印字されておらず、ICカード内のデータとしても本籍地自体は直接書き込まれていないため、転籍したからといってカードの更新手続きや、役所への持ち込みは不要です。ただし、マイナンバーカードを使ってコンビニで戸籍謄本を取得するコンビニ交付サービスを利用している場合は、本籍地が変わったことで新しい本籍地の自治体に対して、コンビニ交付の利用登録申請をやり直す必要があります。この登録には数日から1週間程度かかることがあるため、転籍後にコンビニで戸籍謄本を取りたい場合は、早めに登録申請を済めておくことをおすすめします。
親が亡くなった後の相続手続きで実家の本籍地はどう影響しますか
親が亡くなり、実家じまいと同時に相続手続きを行う場合、親の本籍地が実家のままであっても、相続手続き自体には一切支障はありません。ただし、相続手続き(銀行口座の解約や不動産の名義変更など)を進めるためには、亡くなった親の出生から死亡までの連続した戸籍謄本をすべて集める必要があります。この際、親が生前に本籍地を何度も変更(転籍)していた場合、過去の本籍地があった全国の自治体から、それぞれの除籍謄本や原戸籍を取り寄せなければならなくなり、集める作業が極めて複雑になります。逆に、親が生涯一貫して実家を本籍地とし、一度も転籍していなければ、実家の自治体一箇所(または広域交付制度を利用した最寄りの役所窓口)だけで全ての戸籍を揃えることができるため、むしろ相続手続きは非常に楽になります。
ニコニコ終活アドバイザーからの一言アドバイス:本籍地の変更が、後々の相続手続きで子どもの首を絞めてしまうこともあります。実家じまいを機に、家族全員の戸籍の歴史を整理し、将来の相続に備えるための家族会議を開く良いきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
実家じまい(売却や解体)を行っても、実家の住所を本籍地としたままで何ら法律上の問題はなく、新しい所有者に迷惑がかかることもないため、急いで変更(転籍)する必要はありません。
ニコニコ終活としては、実家じまいという心身ともに負担の大きい時期に焦って本籍地を変更するよりも、まずは片付けや売却手続きを最優先で完了させ、落ち着いた後に、将来の相続手続きや書類取得の利便性を考慮して現在の自宅などへ変更するかどうかをじっくり検討することをお勧めします。
ニコニコ終活は、実家じまいに伴うお片付けや売却のご相談はもちろん、本籍地に関する細かな疑問、将来の相続対策や死後事務委任、ご家族間でのトラブル予防まで、終活に関するあらゆるお悩みを全国対応で、何度でも完全に無料でご相談いただけます。どんな些細な不安でも、まずは一度、お気軽にお問い合わせください。