相続土地国庫帰属制度の10年後とは?負担金や昔の相続の注意点を解説

相続土地国庫帰属制度 10年後
監修
行政書士法人杉山事務所
所属行政書士会:大阪会 / 登録番号:22260069
運営者
ニコニコ終活責任者 飯塚
ニコニコ終活(担当:飯塚)
相談対応毎月10,000件以上

相続土地国庫帰属制度における10年後という言葉には、国に納める10年分の管理負担金と、相続から10年以上が経過した古い土地でも申請が可能という2つの重要な意味があります。この制度を正しく利用すれば、一定の費用を支払うことで不要な土地の所有権を国へ移し、将来にわたる管理の苦労から解放される道が開けます。

ただし、どのような土地でも無条件で国が引き取ってくれるわけではありません。建物を解体して更地にしたり、隣地との境界を明確にしたりと、厳しい要件をクリアする必要があります。また、民法改正によって遺産分割のルールが変わり、手続きを放置する期間が長くなるほど親族間で意見が対立しやすくなるため、事前の慎重な準備と確認が欠かせません。

ニコニコ終活にご相談いただく方の中にも、何十年も前に相続して放置している土地をいまからでも手放せるのだろうかとご不安を抱える方がいらっしゃいます。最終的な法的判断は専門家にご確認いただく必要がありますが、制度の要件を満たせば、過去の相続であっても手放すための選択肢は残されています。

目次

相続土地国庫帰属制度に関わる2つの10年後をわかりやすく解説

相続土地国庫帰属制度について調べるなかで、10年後という期間の記載を目にして疑問を抱く方は少なくありません。この制度において10年というキーワードは、国に納める費用の計算基準と、過去に相続した土地の申請可否という2つの意味を持っています。ここでは、それぞれの具体的な内容について詳しく掘り下げていきます。

土地の引き取り時に納付する10年分の管理負担金

不要な土地を国に引き取ってもらうためには、国庫帰属の承認を受けた後、国がその土地を管理していくための費用をまとめて支払う必要があります。

これが負担金と呼ばれるものであり、原則として10年分の管理費相当額として計算されます。具体的な金額の目安は、土地1筆あたり原則20万円です。ただし、市街化区域内にある宅地や、一部の農地や森林などは、面積に応じて負担金が加算される仕組みになっています。

注意点として、この負担金を納付した時点で土地の所有権は完全に国へと移ります。10年分の管理費を前払いする形になりますが、10年後になったら自分のもとに土地が返ってくるという意味ではありません。支払った後は国が永続的に管理を行うため、将来にわたって草刈りや税金支払いの負担から完全に解放されることになります。

相続から10年以上経過した土地でも申請が可能

もうひとつの意味合いは、相続が発生してから何年経過していても制度を利用できるという点です。

本制度には、相続開始から何年以内に申請しなければならないといった期限は設けられていません。そのため、制度が開始された2023年4月よりも前に相続した土地であっても要件を満たせば申請できます。

親の代、あるいは祖父母の代から相続したまま10年以上、場合によっては数十年放置されてしまった土地でも対象となるため、古い名義のままで悩んでいる方にとっても有効な解決策となります。長年放置していると、誰が相続すべきか分からなくなってしまうこともありますが、名義変更の手続きなどを適切に行えば、国への引き取りを申請することが可能です。

相続発生から10年放置するリスクと遺産分割ルールの注意点

相続から10年以上経過した古い土地でも制度を利用できるとはいえ、長期間放置することには大きなリスクが伴います。特に民法改正によって遺産分割のルールが変更されたため、相続人同士の話し合いが難航する可能性が高まります。ここでは、10年放置するリスクについて詳しく解説します。

  • 特別受益や寄与分の主張ができなくなる
  • 共有名義の場合は全員の同意が必要になり手続きが難航する
  • 固定資産税や管理の負担が続く

遺産分割における10年ルールの適用

民法改正により、相続開始から10年が経過すると、遺産分割における特別な取り分の主張が制限されるようになりました。

これまでは、生前に多額の援助を受けていた相続人がいる場合(特別受益)や、親の介護を献身的に行っていた相続人がいる場合(寄与分)は、それらを考慮して遺産の分け方を調整することができました。しかし、新しいルールでは、相続開始から10年が経過するとこれらの主張ができなくなり、原則として法律で定められた割合(法定相続分)で画一的に分けることになります。

これにより、過去の事情を考慮してほしいと考える親族と、法定相続分通りに分けたい親族との間で意見が対立しやすくなります。遺産分割協議がまとまらないと、土地の名義変更も進まず、結果的に国への引き取り申請もできなくなってしまいます。

共有名義の土地は全員の同意が必要になる問題

相続登記を行わずに放置していると、法律上は相続人全員の共有状態として扱われます。この共有状態のまま国に引き取りを求める場合、大きな壁が立ちはだかります。

相続土地国庫帰属制度では、複数人で共有している土地を申請する場合、共有者全員の同意が必須となります。相続から長期間が経過していると、相続人の一部が亡くなり、その子どもや孫へと権利が細かく枝分かれしていくことが珍しくありません。

会ったこともない親戚に連絡を取り、国庫帰属の申請とそれに伴う費用の負担について同意を取り付けるのは、非常に時間と手間がかかります。そのため、関係性が複雑になる前に、なるべく早めに手続きを進めることが賢明です。

相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらえない土地の条件

10年分の管理費を支払えば、どのような土地でも国が引き取ってくれるわけではありません。国にとって管理の負担が大きすぎる土地は、事前の審査で却下または不承認となります。どのような土地が対象外になるのか、具体的な条件を確認しておきましょう。

  • 建物が建っている土地や境界が不明確な土地
  • 担保権や使用権が設定されている土地
  • 土壌汚染や地中に埋設物がある土地
  • 大きな崖があり管理に過大な労力がかかる土地

ここで、引き取ってもらえる可能性のある土地と、審査に通らない土地の主な違いを表で整理します。

審査の観点引き取ってもらえる土地の例審査に通らない土地の例
土地の現状建物がない更地古い空き家などの建物が残っている
境界の状況隣地との境界線が明確になっている境界が不明確で隣人と争いがある
権利関係抵当権などの権利がついていない住宅ローンの抵当権などが残っている
環境・地形平坦で危険物がない土壌汚染がある、急な崖がある

建物が建っている土地や境界が不明確な土地

もっとも注意が必要なのが、土地の上の建物や、隣の土地との境界に関する問題です。

本制度はあくまで土地を引き取るためのものであり、古い空き家や倉庫などの建物が建っている状態では申請できません。建物を解体して更地にする必要がありますが、その解体費用はすべて所有者の自己負担となります。

また、隣の土地との境界がはっきりしていない土地や、境界をめぐってトラブルが起きている土地も引き取りを拒否されます。このような場合は、事前に測量を行い、隣地の所有者と立ち会って境界を確定させる手続きが必要です。

担保権や使用権が設定されている土地

土地の権利関係が複雑な場合も、国は引き取りを行いません。

例えば、過去の借金の担保として抵当権が設定されたままになっている土地や、他人が通行するための地役権、あるいは農地として貸し出している賃借権などが設定されている土地は対象外となります。これらが残っている場合は、関係者と話し合って権利を抹消してもらうなどの事前の整理が不可欠です。

土壌汚染や地中に埋設物がある土地

土地の目に見えない部分の問題も、厳しい審査の対象となります。

過去に工場などがあった土地で土壌汚染が確認される場合や、地中に大量のゴミや産業廃棄物、古い建物の基礎などの埋設物がある土地は、国がそのまま引き取ることができません。これらの処理には多額の税金が投入されることになるため、あらかじめ所有者の責任で除去や浄化を行う必要があります。

大きな崖があり管理に過大な労力がかかる土地

地形の問題で、将来的に国が管理する上で危険や過度な負担が予想される土地も不承認となります。

勾配が急な崖があり、土砂崩れの危険性があるような土地は、防災工事に多額の費用がかかるため引き取ってもらえません。通常の草刈り程度で維持できる平坦な土地であることが望ましく、管理に過大な労力や費用がかかると判断された場合は審査で落とされてしまいます。

相続土地国庫帰属制度を利用するための具体的な手続きの基本ステップ

要件を満たせそうな土地であれば、実際に手続きを進めることになります。申請から国への引き渡しが完了するまでは、いくつかの段階を踏む必要があります。ここでは、基本的な手続きの流れと各ステップのポイントを解説します。

  • 法務局への事前相談の予約と実施
  • 審査手数料の支払いと申請手続き
  • 承認後の負担金納付と所有権の移転

法務局への事前相談の予約と実施

手続きの第一歩は、対象となる土地を管轄する法務局への事前相談です。

いきなり申請書を提出するのではなく、まずは相談の予約を取り、土地の状況を示す資料を持参して担当者に状況を説明します。ここで、あきらかに要件を満たさない部分がないか、どのような準備が必要かのアドバイスを受けます。この相談を通じて、自治体への寄付や隣人への売却など、他の解決策が見つかるケースも珍しくありません。

審査手数料の支払いと申請手続き

事前相談で問題がないと判断できたら、正式な申請書類を作成して法務局に提出します。

申請時には、土地1筆あたり14,000円の審査手数料を納付する必要があります。この手数料は審査に落ちた場合や途中で取り下げた場合でも返金されないため注意が必要です。申請後は、法務局の担当者による書類審査に加え、実際に現地へ赴いて土地の状況を確認する実地調査が行われます。審査には半年から1年程度かかることもあります。

承認後の負担金納付と所有権の移転

無事に審査を通過し、国庫帰属が承認されると、いよいよ費用の支払いと所有権の移転に移ります。

承認の通知が届いてから30日以内に、10年分の管理費相当額である負担金(原則20万円など)を納付します。指定された期限内に支払いを完了しないと承認が取り消されてしまうため、速やかな対応が求められます。納付が確認された時点で、土地の所有権が国に移転し、以降の固定資産税や管理の責任から解放されます。

相続土地国庫帰属制度や10年後の土地に関するよくある質問

ここでは、制度の利用を検討している方からよく寄せられる、負担金や過去の相続に関する疑問にお答えします。

納付した負担金は10年経過すれば返ってきますか?

負担金の性質について、誤解されやすいポイントです。

納付した負担金は返還されません。この負担金は、国がその土地を今後長期間にわたって管理していくための費用の一部として納めるものです。10年分という目安で計算されていますが、10年経ったら土地が戻ってきたり、お金が返金されたりするわけではなく、所有権は完全に国へ移ったままとなります。

制度が始まる前に相続した土地でも申請できますか?

昔の相続に関する適用範囲についての疑問です。

はい、申請可能です。相続土地国庫帰属制度は2023年4月にスタートしましたが、それ以前に相続した土地であっても要件を満たしていれば対象となります。10年前や20年前に相続して放置している土地でも、ご自身の名義に変更するなどの準備を整えれば利用を検討できます。

ニコニコ終活
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