相続した山林を手放すには?相続土地国庫帰属制度の費用と要件

相続土地国庫帰属制度 山林
監修
行政書士法人杉山事務所
所属行政書士会:大阪会 / 登録番号:22260069
運営者
ニコニコ終活責任者 飯塚
ニコニコ終活(担当:飯塚)
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親や先代から相続したものの、利用する予定のない山林は、相続土地国庫帰属制度を活用することで国に引き取ってもらうことが可能です。

ただし、申請すればどのような土地でも手放せるわけではなく、隣地との境界線が明確であることや、放置された廃棄物がないことなど、国が定める厳格な承認条件をクリアしなければなりません。さらに、土地1筆ごとの審査手数料に加え、引き取りが承認された際には面積に応じた10年分の管理費相当額を負担金として納付する義務が生じます。

ニコニコ終活にご相談にいらっしゃる方の中にも、遠方にある山林の維持管理や、固定資産税の負担に悩まれているご家族の姿を多くお見受けします。この制度を利用するためには、亡くなった方の名義からご自身への相続登記を済ませておく必要があり、共有者がいる場合は全員の同意が求められるなど、法的な整理も欠かせません。

本記事では、山林を国へ返すために満たすべき具体的な要件をはじめ、負担金や手数料の計算方法、そして申請前に確認しておきたい権利関係の手続きについてわかりやすく解説いたします。

目次

相続土地国庫帰属制度を利用して山林を手放すための主な要件

国に山林を引き取ってもらうためには、国がその土地を将来にわたって管理していく上で支障がない状態に整えておく必要があります。審査の段階で不承認とならないよう、まずは制度が定めている主なクリア条件の全体像を把握しておくことが大切です。

申請可能な土地として認められるためには、主に以下の3つの要件を満たす必要があります。

  • 隣接する土地との境界が明らかで、所有権に関する争いがないこと
  • 建物や廃棄物など、土地の管理や処分を阻害する要因がないこと
  • 国による追加の整備が必要ない、適正な森林状態であること

それぞれの要件について、なぜその条件が求められるのか、具体的にどのような状態を指すのかを詳しく解説していきます。

隣接する土地との境界が明確に確定していること

山林の所有権を国に移転するためには、どこからどこまでが自分の土地であるかという境界が明確に確定している必要があります。隣の土地の所有者と境界線について揉めている場合や、境界標が存在せず範囲が曖昧な土地は、引き取りの対象外となります。

とくに山林の場合は、長年放置されていることで境界を示す杭が土に埋もれていたり、目印にしていた木が枯れてしまったりして、境界がわからなくなっているケースが少なくありません。不明確な場合は、事前に隣地所有者と立ち会いを行い、必要に応じて土地家屋調査士などの専門家に依頼して境界を確定させる作業が必要になります。

建物や廃棄物などの管理や処分を阻害する要因がないこと

引き渡す土地の上には、建物や工作物、あるいは廃棄物などが残っていてはいけません。国が管理を引き継ぐ際に、撤去費用や特別な処分の手間がかかる土地は不承認となります。

山林でとくに注意が必要なのは、過去に不法投棄された粗大ゴミや家電製品、放置車両、あるいは自然災害などで倒れて放置されたままの巨大な倒木などです。これらが存在する場合は、申請前にご自身の費用負担で撤去・清掃を行い、更地に近い状態まで整備しておくことが求められます。

国による追加の整備が必要ない適正な森林状態であること

森林としての管理が著しく行き届いておらず、国が引き取った直後に多額の税金を投入して整備しなければならないような荒廃した山林は、引き取りを拒否されてしまいます。

具体的には、樹木が過密になりすぎていて間伐が急務である場合や、広範囲に病虫害が発生している場合、あるいは下草が伸び放題で周辺環境に悪影響を及ぼしている場合などが該当します。長年手入れをしていない山林を申請する場合は、事前に森林組合や専門の業者に依頼し、間伐や下刈りなどの適切な森林管理を施しておく必要があります。

山林を国に引き渡す際にかかる審査手数料と負担金の計算方法

相続土地国庫帰属制度の利用には、決して安くはない費用がかかります。大きく分けて、申請する段階で支払う審査手数料と、審査に通り引き取りが決定した段階で支払う負担金の2種類が存在します。事前にどの程度の費用が必要になるのか、全体像を把握しておきましょう。

それぞれの費用項目と計算の目安について、以下の表にまとめました。

費用の種類金額・計算方法の目安備考
審査手数料土地1筆あたり 14,000円申請時に納付。審査に落ちても返金不可
負担金(基本)面積に応じて計算(例:3,000平方メートルの場合は約30万円)承認後に納付する10年分の管理費相当額
負担金(特例)隣接する山林を合算して計算複数筆ある場合の費用負担を軽減可能

ここからは、それぞれの費用の内訳や、費用を抑えるための特例についてさらに深く解説します。

申請時に必要となる審査手数料

制度を利用するために法務局へ申請を行う際、土地1筆につき14,000円の審査手数料を納める必要があります。山林は、見た目はひとつの山であっても、登記簿上は複数の筆(土地の単位)に分かれていることが多いため、筆数が多いほど手数料も膨らみます。

ここで最も注意すべき点は、この審査手数料は申請を取り下げたり、審査の結果として不承認になったりした場合でも一切返還されないという点です。そのため、要件を満たしていない状態で安易に申請することは避け、事前の状況確認を徹底することが重要です。

面積に応じて計算される10年分の負担金

無事に審査を通過し、国が山林を引き取ることが決定した場合、申請者は10年分の土地管理費に相当する負担金を納付しなければなりません。山林(森林)の場合、この負担金は土地の面積に応じて計算される仕組みになっています。

具体的な計算式としては、基準となる定額(248,000円)に、面積に応じた単価を掛け合わせた金額を加算して算出します。たとえば、面積が3,000平方メートルの山林の場合、基本計算は「3,000平方メートル × 17円 + 248,000円」となり、合計で299,000円(約30万円)の負担金を納める必要があります。面積が広大な山林であればあるほど、この負担金も高額になります。

隣接する複数の山林をまとめる合算の特例

先述の通り、山林は登記簿上でいくつもの細かい筆に分かれていることが一般的です。原則通りであれば、それぞれの筆ごとに負担金が計算され、結果として莫大な金額になってしまう恐れがあります。

これを救済するための措置として、隣接する複数の山林を同時に申請する場合、それらの土地の面積をすべて合算し、ひとつのまとまった土地として負担金を計算できる特例が設けられています。この特例を適用することで、各筆に基本料金が二重三重にかかることを防ぎ、大幅に費用を抑えられる可能性があります。

制度を申請する前に確認すべき権利関係と手続きの注意点

費用や土地の状況に関する要件だけでなく、法律上の権利関係が整理されていることも申請の絶対条件となります。亡くなった親族の土地をそのまま放置している状態では、いざ手放そうと思っても手続きを進めることができません。

申請前に必ず解決しておかなければならない、権利関係に関する2つの重要ポイントをまとめました。

  • 亡くなった方からの相続登記(名義変更)を完了させること
  • 共有名義の場合は共有者全員で共同申請を行うこと

それぞれの注意点について、手続きが滞りやすい理由を交えて解説します。

先代名義のままでは不可となる相続登記の義務

相続土地国庫帰属制度を申請できるのは、相続や遺贈によってその土地の所有権を取得した人に限られます。そのため、登記簿上の名義が亡くなった親や祖父母のままになっている場合は、申請を受け付けてもらえません。

申請を進めるためには、まずご自身の名義へと変更する相続登記を完了させる必要があります。なお、相続登記は法改正により義務化されており、放置すると過料が科される可能性もあるため、山林を手放すかどうかにかかわらず、早急な手続きが求められます。

共有名義の山林は共有者全員による共同申請が必須

相続の結果として、兄弟姉妹などの親族と山林を共有名義で所有しているケースも少なくありません。この場合、自分自身の持ち分(共有持分)だけを切り取って国に引き取ってもらうことはできず、共有者全員が合意した上で共同申請を行う必要があります。

共有者の中に一人でも制度の利用に反対する人がいたり、長年連絡を取っておらず行方がわからない人がいたりすると、申請手続きは完全にストップしてしまいます。山林の処分については、普段から親族間で方針を話し合い、合意形成を図っておくことがトラブル回避の鍵となります。

相続土地国庫帰属制度の山林引き取りに関するよくある質問

山林の処分に向けた準備を進める中で、多くの方が疑問に感じる点についてお答えします。

審査に落ちた場合、整備にかけた費用は無駄になりますか

制度の要件を満たすために間伐やゴミの撤去を行ったものの、別の要因(境界の不一致など)で不承認となった場合、国から整備費用の補填を受けることはできません。そのため、多額の費用をかけて整備を始める前に、その他の要件で引っかかる部分がないか、専門家を交えて総合的に事前調査を行うことを強く推奨します。

自分たちでは隣地との境界がわからない場合はどうすればよいですか

山林の境界は専門知識がないと判別が極めて困難です。まずは法務局や市区町村の役場で公図や地積測量図などの資料を取得し、手がかりを探します。それでも不明な場合は、土地家屋調査士に依頼して現地の調査や測量、隣地所有者との立ち会い交渉をサポートしてもらうのが確実な解決策となります。

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