亡くなった人の預金で葬儀費用を支払う方法とは?口座凍結後の引き出し手順

亡くなった人の預金 葬儀 費用
監修
行政書士法人杉山事務所
所属行政書士会:大阪会 / 登録番号:22260069

葬儀費用を亡くなった人の預金から支払うことは可能です。

銀行が死亡の事実を把握して口座が凍結される前であれば引き出すことができますし、凍結された後でも預貯金の仮払い制度を利用すれば金融機関ごとに上限150万円まで払い戻しを受けられます。

ただし、引き出したお金の用途を証明する領収書の保管が不可欠であることや、相続放棄を検討している場合は費用の払い方によって不都合が生じるリスクがある点には十分な注意が必要です。

ニコニコ終活の相談現場におきましても、突然の不幸に直面して手元の資金に余裕がなく、故人の口座からお金を下ろしてよいのかどうか迷われているご遺族の姿を数多く拝見いたします。

本記事では、口座凍結前後の正しい引き出し手順から、相続税控除の計算方法、香典の適切な扱い方まで、いざという時にご遺族が焦らず適切な判断を下せるための対策をわかりやすくお伝えします。

目次

亡くなった人の預金から葬儀費用を引き出すための具体的な手順

葬儀社への支払いは一週間以内など期限が短く設定されていることも多く、焦って故人の口座から資金を捻出ようとするご遺族は少なくありません。ここでは、銀行が死亡の事実を知る前後で異なる、正しいお金の引き出し手順について解説します。現在の状況に合わせて適切な対応を取ることが重要です。

引き出しのタイミングや手続きには、大きく分けて以下の2つの状況が考えられます。全体像を把握した上で、それぞれの詳しい手順を確認していきましょう。

  • 銀行が死亡の事実を知る前におけるキャッシュカードでの引き出し
  • 銀行口座が凍結された後に利用できる預貯金の仮払い制度での引き出し

銀行が死亡の事実を知る前の預金引き出しと注意点

銀行は役所に死亡届が提出されただけでは、即座に個人の死亡を把握することはありません。そのため、金融機関が独自に死亡の事実を知る前であれば、これまで通り遺族が故人のキャッシュカードを利用してATMから現金を引き出すことが可能です。

しかし、後から他の親族との間で遺産分割協議を行う際、勝手に引き出したお金が原因で財産の使い込みや横領を疑われるなどの深刻なトラブルに発展するケースがあります。また、ATMには1日あたりの引き出し限度額が設定されていることが多く、一度に全額を用意できない場合があることにも留意してください。

葬儀費用として正当に使用したことを証明するために、葬儀社や斎場、宗教者などから受け取った領収書は必ず大切に保管し、引き出した金額と使途を明確にしておくことが何よりの対策となります。

銀行口座が凍結された後に利用できる預貯金の仮払い制度

遺族からの窓口への連絡や、新聞の訃報欄などを通じて銀行が死亡の事実を知ると、遺産分割トラブルを防ぎ相続人の権利を守る目的で即座に口座は凍結され、通常の引き出しは一切できなくなります。口座凍結後に葬儀費用が必要な場合は、遺産分割前の相続預金の払戻し制度を活用することになります。

この仮払い制度を利用すれば、他の相続人全員の同意を集めなくても、申請者単独で金融機関ごとに定められた上限金額までお金を引き出すことが可能です。引き出せる金額は、以下の計算式で算出される金額か、1つの金融機関につき150万円のうち、いずれか低い方の金額となります。

手続きに必要な書類は金融機関によって異なりますが、一般的には故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や、申請者自身の印鑑証明書などが求められます。戸籍の収集には時間がかかることも多いため、具体的な必要書類については、ゆうちょ銀行をはじめとする各金融機関の公式窓口で事前に確認して迅速に準備を進めてください。

葬儀費用を亡くなった人の預金で支払う際の相続放棄に関するリスク

故人に多額の借金があり、プラスの財産よりもマイナスの負債の方が多い場合は相続放棄を選択することが一般的です。しかし、葬儀費用を故人の預金から支払う行為が、相続放棄の手続きに重大な悪影響を及ぼす可能性があるため慎重な判断が求められます。

判断の分かれ道となるポイントは以下の2点です。間違った対応で不利益を被らないよう、詳細を確認しておきましょう。

  • 預金の使用が法定単純承認とみなされるケース
  • 例外として認められる社会通念上相当な範囲の葬儀費用

預金の使用が法定単純承認とみなされるケース

相続放棄をするためには、故人の財産を一切受け取らず、処分もしないことが大原則です。もし亡くなった人の預金を引き出して、遺族自身の生活費に充てたり、不必要なほど豪華な葬儀の支払いに使ってしまったりすると、財産を勝手に処分したとみなされてしまいます。

これを法定単純承認と呼び、借金を含めたすべての遺産を無条件で相続する意思があると法律上判断されてしまいます。一度法定単純承認が成立してしまうと、後から莫大な借金の存在に気づいたとしても相続放棄ができなくなるため、自己判断で故人の預金を動かすのは大変危険な行為です。

例外として認められる社会通念上相当な範囲の葬儀費用

一方で、亡くなった人を適切に弔うための一般的な葬儀費用については、故人の財産から支払ったとしても直ちに財産の処分には当たらないとする判例が存在します。故人の身分相応であり、社会通念上相当な範囲の葬儀費用であれば、例外的に預金を使っても相続放棄が認められるケースが多いのが実情です。

ただし、どこまでが相当な範囲であるかについての明確な金額基準はなく、参列者の規模や地域の慣習など個別の事情によって法的な判断が大きく異なります。少しでも借金の存在が疑われる場合や、相続放棄を視野に入れている場合は、ご自身で判断して預金を引き出す前に、必ず弁護士などの専門家へ相談して指示を仰ぐようにしてください。

亡くなった人の預金で支払った葬儀費用の相続税控除について

葬儀にかかった費用は、相続税の計算をする際に遺産総額から差し引くことができ、これを債務控除と呼びます。相続税の負担を大きく軽減できる大切な仕組みですが、葬儀に関連するすべての出費が控除の対象になるわけではありません。

控除の対象になる費用とならない費用を明確に区別し、申告漏れや誤りがないように整理しておくことが重要です。まずは以下の表で、それぞれの違いを視覚的に確認してください。

控除の対象となる費用(差し引けるもの)控除の対象外となる費用(差し引けないもの)
通夜・告別式の葬儀会社への支払い初七日や四十九日などの法要費用
火葬料・埋葬料・納骨費用香典返しの費用
僧侶など宗教者への読経料・お布施墓石・墓地・仏壇の購入費用
病院から自宅や斎場への遺体搬送費遺族の喪服レンタル代や購入費

相続税の計算で遺産総額から差し引ける葬儀費用

控除の対象として認められるのは、通夜や告別式を行い、故人を弔う上で必須となる費用です。葬儀社への基本料金はもちろん、火葬場での費用、お寺へのお布施や心付けなども含まれます。

お布施など領収書が発行されない出費については、いつ、誰に、いくら支払ったのかを大学ノートなどにメモして残しておくことで、控除の証明として税務署に認められます。亡くなった人の預金から支払ったか、遺族の自己資金から支払ったかを問わず、これらの必須費用はしっかりと記録に残しておきましょう。

控除の対象外となる法要費用や墓石などの出費

一方で、葬儀そのものには直接関係のない費用や、後日改めて行われる追悼行事の費用は控除の対象外となります。例えば、初七日や四十九日などの法要費用、参列者への香典返しの費用などは遺産総額から差し引くことができません。

また、墓石や仏壇の購入費用も控除対象外です。これらは祭祀財産と呼ばれ、そもそも相続税の課税対象とならない非課税財産であるため、その購入費用を遺産から差し引くことは二重の控除になってしまうというルールがあるためです。喪服のレンタル代なども遺族個人の日用品という扱いになるため注意してください。

参列者からの香典を葬儀費用の支払いに充てる場合の正しい扱い

亡くなった人の預金を引き出すことに不安がある場合や、口座が凍結されて資金が引き出せない場合、参列者からいただいた香典を葬儀費用の支払いに充てることを検討するご遺族も多くいらっしゃいます。香典の法的な位置づけを正しく理解しておくことで、お金のトラブルを未然に防ぐことができます。

香典の扱いについては、以下のポイントを押さえておくことが大切です。それぞれの詳細を解説します。

  • 香典の法的な性質と所有権の所在
  • 葬儀費用に充当する際の一般的な流れ

香典は相続財産に含まれず喪主が管理する資金

香典は、故人を偲んで弔意を表すために、参列者から遺族に対して直接贈られるものです。そのため、香典は亡くなった人の財産ではなく、受け取った代表者である喪主の財産として扱われます。結果として、香典は相続財産には含まれず、遺産分割協議の対象にもなりません。

喪主が受け取った香典を、そのまま葬儀費用の支払いに充てることは一般的に広く行われており、法律上も全く問題ありません。ただし、昨今は家族葬の増加などにより、香典だけで葬儀費用の全額を賄えるケースは少なく、不足分を亡くなった人の預金から引き出すか、遺族の自己資金から持ち出しで支払うかの検討が必要になることが多い点には留意しておきましょう。

亡くなった人の預金から葬儀費用を支払う際のよくある質問

ご遺族が直面しやすい疑問や不安について、よくある質問とその回答をまとめました。不安を抱えたまま手続きを進めず、正しい知識を持って冷静に対処することが大切です。

誰の同意も得ずに勝手に預金を引き出すとどうなりますか?

口座凍結前にキャッシュカードで引き出すこと自体は物理的に可能ですが、他の相続人に無断で行うと、後から使い込みや横領を疑われたり、遺産分割協議で激しく揉めたりする原因になります。引き出す際は必ず事前に他の家族へ事情を説明し、葬儀費用として使った証明となる領収書や明細書を徹底して保管し、透明性を保つようにしてください。

預貯金の仮払い制度を利用するには何日かかりますか?

必要書類をすべて揃えて金融機関の窓口に提出してから、実際にお金が指定口座へ払い戻されるまでには、おおむね1週間から2週間程度かかるのが一般的です。葬儀社への支払い期限に間に合わない可能性があるため、口座が凍結されてしまった場合は速やかに戸籍収集などの準備を始めることをおすすめします。どうしても間に合わない場合は、葬儀社に事情を話して支払いの猶予を相談してみましょう。

亡くなった人の預金と葬儀費用のまとめ

亡くなった人の預金から葬儀費用を支払うことは可能ですが、銀行が死亡を知ると口座が凍結されるため、凍結前は領収書を保管しての引き出し、凍結後は仮払い制度を利用して上限額内で払い戻しを受ける必要があります。

終活や死後事務の専門家としての見解をお伝えしますと、相続放棄ができなくなるリスクや親族間の金銭トラブルを避けるためにも、預金の取り扱いは決して自己判断で進めず、少しでも不安がある場合は法的な影響をしっかり確認してから動くことが何よりも重要です。

ニコニコ終活は全国対応で、葬儀の手配から死後事務、複雑な相続に関するお悩みまで、何度でも完全に無料でご相談いただけます。ご家族だけで抱え込まず、お金の手続きで取り返しのつかない失敗をしてしまう前に、ぜひお気軽に無料相談をご活用ください。

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